「はははは、はは……」中村智也は古社長のみじめな姿を見て、とうとう我慢できなくなり、笑いが噴き出した。
「智也、何をしているんだ!」渡辺直樹は眉をひそめ、彼を横目で見ながら、佐藤陸の方を向いた。まだ智也のために弁解しようと考えていたが、智也は一人の女性のために、今回のもてなしを台無しにしてしまった。
佐藤兄さんは絶対に彼を許さないだろう。それなのに、彼はまだあんなに無邪気に笑っている。
今田由紀は自分が大変なことをしでかしたと気づいた。あの古社長は彼女を食い殺しそうな目で睨んでいた。
彼女は悲鳴を上げそうになるのを必死に堪え、その場では智也と陸しか知らなかった。
こんな大きな問題を起こしたのに、陸に知られるのも怖かったので、智也の椅子の後ろに行き、彼の襟を引っ張るしかなかった。
智也はぷっとさらに楽しそうに笑い、振り返って由紀に親指を立てた。
「よくやった、素晴らしい!はは……古社長、その姿ではさっさと身だしなみを整えた方がいいですよ。直樹、早く誰かに古社長を案内させて……」
「結構だ!青木の若様、一人の女のために、私をこんな風に弄ぶとは!」
古社長は恥ずかしさと怒りで智也を叱責した。
「智也、早く古社長に謝れ。お前はやりすぎだぞ!」直樹は由紀が誰なのか知らなかったが、智也が佐藤に叱られるのを恐れて、目配せして何か良い言葉を言うよう促した。
智也は咳払いをして言った。「申し訳ありません、古社長。さっきはわざと笑ったわけではなく、ただ……あなたの姿がとても滑稽に見えたもので。つい我慢できなくて……すみません、古社長。大人の対応をお願いします。この一杯でお詫びします!」
智也のこの謝り方は逆効果で、謝らない方がまだましだった。この謝罪で古社長はますます面目を失った。
彼は激怒して陸に言った。「佐藤社長、あなたはどう思われますか?!」
これは明らかに陸に智也を懲らしめてほしいという意味だった。智也は陸の部下だから、彼がどれだけ怒っていても、陸の顔を立てなければならない。
犬を叩くにも飼い主を見るというものだ。
陸は美しい唇の端を引き締め、起きたことをすべて見ていた。この古社長は彼の妻に色目を使ったのだ。
本当に許せない!
しかし彼は由紀が家に帰らず、こんな夜遅くに一人でこんな場所に来る勇気があるとは思わなかった!