「陸兄さん、私が悪かったの。高橋美奈に誘拐されたことを話さなかったのは、別に隠そうとしたわけじゃないの。あの時、私もすごく怖かったし、陸兄さんに話したかったけど、陸兄さんが潔癖症だって知ってたから、もし私が誘拐されたって知ったら…」
今田由紀は佐藤陸の胸に顔をうずめ、泣いては訴え、また委屈そうに陸の胸に顔をうずめて泣き続けた…
陸は胸が痛むほど心配で、彼女を抱きしめながら、熱い唇で励ますように彼女の白く滑らかな首筋や耳の周りにキスをした。
彼女がその時、そんなにも色々と考えていたとは思わなかった。
陸は由紀が自分に話さなかったのは、彼を信頼していないからだと思っていた。
しかし実際は、由紀は彼の体調が良くないこと、目が見えないことを考慮して、もし彼女が誘拐されたと知ったら、心配で胸が張り裂けそうになるだけで、何もできないだろうと思ったのだ。
さらに、彼女が誘拐されたことで、潔癖症の彼が彼女を嫌うのではないかと心配していたのだ…
陸は腕の中で泣く彼女に胸が引き裂かれるような思いで、後悔の念に駆られた。
「もういいよ、もういいよ。陸兄さんは分かったよ、君が辛い思いをしたんだね。君は陸兄さんのことを考えてくれたんだね。でも、由紀、僕たちは家族だよ。これからは何かあったら、すぐに陸兄さんに教えてほしい。それができるかな?」
由紀は泣きはらした目で、委屈そうに頷いた。「うん…」
そしてまた陸の胸に顔をうずめて泣いた!
「もう泣かないで、もう泣かないで…」
「陸兄さんが悪いの、さっきすごく怖かった。私のこと嫌いになったかと思った!」
由紀の震える声が彼の胸から漏れ聞こえてきて、陸は彼女を抱く腕にさらに力を込めた。
彼が彼女を手放すわけがない。彼が怒ったのは嫉妬したからであり、彼女に対してではなく、佐藤大翔に対してだったのだ!
陸はまだ読み終わっていない紙が2枚残っているのを見て、その後の言葉は由紀からの愛の告白だと思った。
陸は由紀の口から直接聞きたくて、懇願するように言った。「由紀、全部読み終わったの?一万字以上あるって言ってたけど、これじゃ字数が合わないよね?」
由紀は陸がもう怒っていないことを知り、涙の跡を陸のシャツで何度か拭うと、残りの2枚の紙を手に取った。
「あ、確かにまだ読み終わってないわ。読み終えた方がいい?」