第39章 私はヒロインが欲しい

彼女の冷たい態度に、黒川源の瞳が暗くなった。

「もちろん、君が望むなら……」彼はストレートに答えた。

初陽は本当に驚いた。一瞬戸惑いを隠せなかった。これは……この男は一体何を企んでいるのだろう?

言葉が唐突で、前後の脈絡がない。

彼女は胸がドキドキした。こいつ、絶対に罠を仕掛けているに違いない。

「あの時、星野寒がどうやってお前を手に入れたか、俺もお前を一度手に入れてみたい。元年の役は女主人公以外なら、好きなのを選んでいいぞ……」彼は意地悪く笑いながら、意味深に彼女を見つめた。

息が詰まった。彼女は歯を食いしばり、冷たい視線を彼に向けた。

「もし私が女主人公の役を望むとしたら?」

「知らないわけじゃないだろう?この映画は東雲敏のために企画されたものだということを」黒川は一瞬驚き、唇の端を上げた。この女がこんなに欲深いとは思わなかった。

先ほどの駆け引きは、結局この女主人公の役を狙ってのことだったのか?

目的のためなら手段を選ばない女なんて、彼は数多く見てきた。

だが、ここまで直接的に言い出す女は、葉田初陽が初めてだった。

しかし、それがどうした?彼女も結局は凡庸な女に過ぎない。成功のため、出世のため、あらゆる原則を無視して必死に上を目指す。

こんな女は、正直気分が悪くなる。

ゆっくりと立ち上がると、彼の瞳の熱気は徐々に冷淡さへと変わっていった。

「一晩俺に付き合えば、女二号の役をやらせてやる……これは星野ボスがお前にくれたものより魅力的だろう。あいつがお前にくれたのは女三号の役だけだったんだからな……」彼は淡々と笑い、唇の端にかすかな嘲りを浮かべた。

初陽は眉を上げ、心の中の怒りを抑えながら、彼に一歩近づいた。

「いいわよ。でも、星野寒が手をつけた女を受け入れる勇気があるの?確か、あなたたちは友達よね?」

源は嘲笑した。その皮肉な調子はさらに濃くなった。

「女なんて服みたいなもの。彼がもう一度お前に手を出す気があると思うのか?彼には愛する女がいる。お前のようなちっぽけな存在なんて気にもしないさ……」

言葉は酷かった。

しかし初陽は彼の言葉の重要な部分を捉えていた。この話し方からすると、どうやら黒川と星野寒の関係はかなり深いようだ。

星野寒が愛する女のことまで知っているなんて?