第40章 美人薄命か

……

十分後、彼女は廊下を曲がり、黒川源を振り切ることに成功した。

来た道を戻り、非常口の通路に戻ると、非常口は大きく開いており、すでに人影はなかった。

心の中に影があり、あの男女が情熱的に交わった火花がまだ残っているような気がした。

彼女は鼻を押さえながら、階段室に入った。

身をかがめてしゃがみ込み、とても小さな隅から、小型の録音ペンを拾い上げた。

目で周囲を軽く見回し、彼女は録音ペンを手の中に握りしめ、それから悠々と宴会場へ歩いていった。

しかし、そこに足を踏み入れた次の瞬間、足を止めた。

宴会場の入口では人々が押し寄せ、誰かを迎えているようだった。

彼女は目を細めて見ると、黒川源が東雲敏を連れて、一組の男女を案内しているのが見えた。

思わず体が微かに震え、彼女は後ずさりし、背中が冷たい壁に当たった。

彼女は寒さを感じず、視線はずっとあの男女に注がれ、熱い炎を放っていた。

男性は厳しい表情で、一式の黒いスーツを身にまとい、袖口のダイヤモンドのボタンが照明の下で眩しく光っていた。

星野寒でなければ、誰だろう?

他の人々の熱心な取り入りに、彼は動じることなく、感情と注意は彼の腕に寄り添う女性だけに向けられていた。

いつもそうだった。彼女がいる場所では、彼の目にはその人だけしか映らなかった。

かつて、彼女は痛みで麻痺するような感覚を何度も味わった。

その女性は黒く艶やかな長い髪を肩に流し、淡く上品な化粧が頬に薄紅を浮かばせていた。

美しい顔立ちに、愛らしい笑顔、眉は魅惑的で霧のよう、かすかな色気を漂わせていた。

一挙手一投足に淡い輝きを放ち、天性の絶世の美しさとはこのことだろう。

秋山伊人……

悪夢のように、彼女が心の奥底に押し込めていた人物。

転生して初めて、彼女は再び彼女を見た。

心の中で、何かが引っかかるように、かゆいような痛みを引き起こした。

その絶世の美女が男性の腕に寄り添い、男性の表情には愛情と慈しみが溢れているのを見て。

会場では、多くの人が伊人の美貌を称賛していた。

確かに、秋山伊人の容姿は比類なきものだった。

「こちらが伊人さんですか?噂では人間離れした美しさと聞いていましたが、今日お会いして、本当に仙女が舞い降りたようですね」