第66章 何人もの男のベッドに上がった

傲慢な東雲敏を見て、初陽は彼女のことが哀れでならなかった。

権力を笠に着て人をいじめるのはまだしも、問題は彼女の権力、彼女を支えるバックが、すでに完全に彼女を見捨てていることだった。

この女はまだそれに気づいていない。よりによって葉田初陽に喧嘩を売るとは?

以前、東雲敏に対して少しだけ感じていた罪悪感は、今や跡形もなかった。

自業自得、哀れむべき者には憎むべき点がある、まさに敏のことだ。

初陽は小さく笑い、軽く首を振りながら、瞳から冷たい光を放った。

彼女は一歩前に出て、敏を睨みつけた。

「謝れ……」

冷たい瞳は霜を吐き出し、鋭い氷の刃のように敏の目の奥まで突き刺さった。

敏は心の底で震え、思わず後ずさりした。

初陽の突然の強い威圧感に、敏も弱みを見せまいと声を張り上げ、黒川源を持ち出した。

「あなた、誰と話してるか分かってる?私は東雲敏よ。私の彼氏は黒川社長、この映画の最大のスポンサーなの……」

ふん……初陽は笑いたくなった。人は自信がなく勇気がない時だけ、自分の後ろ盾を持ち出して威張るものだ。

でも、実力もないくせに彼女の前で威張るなんて、自ら苦しみを招いているだけではないか?

彼女は眉を上げ、嘲笑と軽蔑を浮かべた。

「へぇ?あなたの彼氏は黒川社長?さっき聞いたところによると、彼はメディアにあなたとの関係を否定したそうね?彼があなたのために『元年』の制作を始めたんじゃなかったの?今やあなたは女三番手で、この女主役が誰に行ったのか知らないの?私は愚かで頭の悪い女が一番嫌い。頭が悪いだけならまだしも、偉そうにして人をいじめるなんて。みんながあなたにへつらって持ち上げると思ってるの?あなた、誰?何様のつもり?」

「ああ、思い出した。あなたは東雲敏、自分の体を使って一歩一歩這い上がってきたんでしょ?何人の男のベッドに入れば、ちょっと名の知れたモデルになれるの?黒川社長も汚いとは思わないの?こんな公共バスみたいな女に乗るなんて……ふん……」

敏は一瞬固まり、歯で唇を強く噛みしめ、初陽を睨みつけた。

蛇は七寸を打て、初陽のこの言葉は、まさに彼女の痛いところを突いていた。

「あなた……」彼女は歯ぎしりしながら、初陽を指さして「あなた」という一言だけを吐き出した。