第51章 一通の恋文を二年間待った

彼は深く息を吐き出し、激しく乱れる心を必死に抑え込んだ。恐れていた。怒りが極まれば、この分別のない女を絞め殺してしまうのではないかと恐れていた。

冷たく笑い、瞳の奥に憎悪の色が閃いた。

「いいだろう……お前が堕落したいなら、俺、星野寒が余計な真似をして自分を貶めた。好きにしろ……」歯を食いしばってこの言葉を吐き出すと、彼は赤く染まった瞳で身を翻した。

ある人々は、手放せるなら手放すべきだ。何故苦しみながら執着し、自分を疲弊させるのか。

今回が、最後の機会だった。

男の姿が徐々に消えていくのを見つめながら、初陽の両目は真っ赤に染まっていたが、涙は一滴も見えなかった。

脳裏には、高校三年生の卒業式の年、彼女が彼の彼女になったあの場面が突然浮かんできた。

それは夏の日、卒業式の後のことだった。

彼女はラブレターを握りしめ、顔を赤らめ、不安げに校門の前に立ち、首を長くして待っていた。

その時、彼女は白いシンプルなウエストマークのワンピースを着て、艶やかな黒髪を肩から腰にかけて流していた。

雪のような白い肌、秋の水面のような瞳は、かすかに碧い波を漂わせ、まるで泉のように人を引き寄せ、完全に魅了してしまうようだった。

彼女はラブレターをしわくちゃに握りしめ、また彼に見られて嫌われるのを恐れ、しわを伸ばそうと平らに押さえた。

人だかりの中で騒ぎが起こり、彼女が顔を上げると、一目見ただけで恋の罠に落ちた。その罠は彼女の命を終わらせる劫となった。

彼は白い服を纏い、まるで月光に乗ってやってきたかのようだった。彼の周りには金色の光が漂い、その光は彼女の目を眩ませ、激しく鼓動する心を掴んだ。

一目で永遠を感じ、彼女はその時から彼の情の網に落ちた。

しかしその情の網は最も毒であり、最後には彼女の命を奪うことになった。

彼の一歩一歩が近づくたび、彼女の心の先を踏みしめるようだった。

その瞬間、彼女の心臓は生まれて初めて最も速く鼓動し、その速さに彼女は目眩がし、息が詰まりそうだった。

「星野先輩……」歯を食いしばって彼の行く手を遮り、彼女の頬は熟れたリンゴのように赤く、顔を下げて彼を見る勇気もなく、震える手で手紙を差し出した。

ざわめきの中、見物する同級生たちはどんどん増えていった。

すぐに彼らは輪を作り、彼女と彼を円の中に閉じ込めた。