「二つ目の件は何?」
「二つ目はね、風影が最近資金を集めてドラマを撮影するんだって。タイトルは『元年』。聞いたところによると、投資家はすごく金持ちでイケメンで、この涼城でも指折りの御曹司なんだって。その御曹司が最近、あるスーパーモデルと付き合い始めたんだけど、そのモデルが芸能界に進出したいと思って、彼に頼んでこのドラマを制作することになったらしいの。『元年』の脚本は私も読んだけど、すごくいい題材よ。民国時代の夫婦が苦楽を共にして、最終的に莫大な財を成す物語なんだけど…」
「ちょっと待って、そのドラマのタイトルは何だって?」初陽は急いで可美の話を遮り、声には切迫感が滲んでいた。
可美は不思議に思いながらも答えた。「元年…」
初陽は携帯をぎゅっと握りしめ、瞳の奥に興奮の光が走った。全身の血液が沸き立つような感覚だった。
前世で『元年』というドラマは数々の視聴率記録を打ち立て、何年ぶりかの社会現象を引き起こしたのだ。
ほぼ全ての人が見ていた。上は財界の名士や富豪から、下は一般市民まで。
前年に『華麗なる歳月』が大ヒットし、翌年に『元年』が登場して、『華麗なる歳月』の人気を完全に上回った。
あの二年間は、芸能界が最も栄えた、最も熱気に溢れた時期だった。
当時の彼女は、別荘で暇を持て余し、毎日このドラマを追いかけていた。
感動的なシーンでは肝が裂けるほど泣き、楽しいシーンでは涙を拭いて笑った。
『元年』は、彼女にとって特別な意味を持っていた。
おそらく、あの時『元年』をきっかけに、演技への愛が心の奥底に刻まれたのだろう。
彼女は瞳を輝かせ、目に熱いものがこみ上げてきた。
湧き上がる感情を静かに押し殺し、震える声で一言一言はっきりと言った。「可美、私はこのドラマのヒロインを演じたい。どんなことがあっても、絶対にこの役を手に入れるわ…」
「あのね初陽、私の話を最後まで聞かないで遮ったでしょ。言おうとしてたのは、このヒロイン役はもう内定してるってこと。ヒロインを演じるのは東雲敏っていう、あの御曹司のスーパーモデルの彼女なの。彼が彼女のために特別に企画したドラマなんだから、ヒロイン役があなたに回るわけないじゃない」可美は興奮している初陽を傷つけたくなかったが、現実を伝えざるを得なかった。
初陽は一瞬固まったが、すぐに深呼吸して気持ちを落ち着かせた。