「本当に?」
「もちろんよ、ここがどんな場所か分かってる?あなたが簡単に入れるような場所じゃないわ。誰かに見つかる前に、早く出て行って……」
「ふん……東雲敏、久しぶりだな。せっかく来たんだから、俺の欲求を満たしてくれよ。この間ずっとお前のことが恋しくてたまらなかったんだ」
「警告するわ、変なことしないで……」
「なんだと?俺はお前の夫だぞ、もう触れないというのか?今日はどうしてもお前が欲しい……」
「松田耘、あなた……最低よ……」
激しい揉み合いの音が聞こえ、互いに押し合う音さえ混じっていた。
「俺が最低でいいさ、お前が従わないなら、人を呼ぶぞ。あのバカな金持ちの息子にお前の正体を見せてやる。全てをバラしてやる。お前は手段を尽くして、一歩一歩計画的に彼に近づき、彼の酒に薬を入れて、彼をメロメロにしようとした。既に結婚して、子供も夫もいるのに、平凡な生活に満足できず、いつも枝に飛び乗って鳳凰になりたがり、大スターの夢を叶えたいと思っている……」
初陽は舌打ちして首を振った。この女は野心も度胸も大きい。
黒川源に手を出して、自分がどれほど悲惨な死に方をするか分かっているのだろうか?
ドアの隙間から、彼女は目を細めて覗き込んだ。
敏は徐々に抵抗をやめ、その美しい顔は血の気が引いて真っ青になっていた。
耘の目には嘲りが光り、その後自嘲気味に笑いながら続けた。「俺には才能がなく、お前に輝かしい未来を与えることも、大スターの夢を叶えることもできない。お前が大人しく俺の言うことを聞いて、俺の思い通りになるなら、俺は永遠にお前の正体を暴露したりしない。分かってるだろう?あの金持ちの息子は並の身分じゃない。もし彼が真実を知って、自分が騙されたと知ったら、お前を許すと思うか?お前はまだ金持ちの家に入って、彼という大木にしっかりとしがみつき、彼の莫大な財産を手に入れたいんだろう?」
彼は手を伸ばして彼女の滑らかな肌を摘み、その目には下品な欲望が光っていた。
「もしこれらが暴露されたくないなら、今のお前は俺に従うべきだ……」
その手は彼女の頬から滑り落ち、白い首筋へと移動した。
敏は非常に賢く、弱みを見せることを知っている女だった。
耘の前では良い顔をしても無駄だと悟り、徐々に弱みを見せ始めた。