第56章 私は毒蛇だ

「黒川さん、いい質問ですね。私はもちろん先に内情を知っていました。例えば、偶然東雲敏の秘密を知ったとか、買い物中に偶然彼女の隠し子に出会ったとか。東雲敏にそっくりなあの子供です。私がどうやってこの秘密を知ったのか、可能性はそれくらいでしょう。でも、あなたにとってそれが重要なのですか?」

「一体何が欲しいんだ?こんな手段を使って、卑劣だと思わないのか?俺が口封じのために殺すかもしれないとは思わないのか?」黒川源は彼女をさらに引き寄せ、低い声で尋ねた。

初陽はボイスレコーダーを取り出し、彼の目の前でちらつかせた。

「この録音は何箇所かにバックアップしてあります。もしあなたが私に何かしようとするなら、この録音が涼城中に広まることになりますよ。黒川グループの御曹司のスキャンダルは、間違いなく涼城全体を震撼させるでしょうね。そして黒川家の名誉は、あなたによって完全に台無しになる。百年続く名家の企業は、こんな小さな汚れも許されないでしょう?黒川一族の会長がこのことを知ったら、きっとあなたの皮を生きたまま剥ぐでしょうね、ハハハ……それは面白いことになりますよ。プレイボーイがもうプレイボーイでなくなる、考えるだけでワクワクすることじゃないですか……」

女性は花のように微笑み、その艶やかな顔立ちが彼の瞳に映った。

彼は怒るどころか笑い、彼女の笑みを浮かべた目元を見つめながら、自分も口角を上げた。本当に面白い、これまでの人生で、いつも女を弄んできたのは自分だった。今や、この女に翻弄されているとは。

手を出すこともできず、放っておくのも悔しい。

胸が締め付けられるような、今の彼の葛藤は言葉にできないほどだった。

初陽は源の青ざめたり赤らんだりする表情の変化を見て、思わず彼の手を開いた。

ベッドの頭に寄りかかって座り、彼の体から発せられる熱は灼熱で、自分まで燃えそうな感覚だった。