第73章 助けを求めようとする

初陽は歯で唇を噛み、辺りを見回した。夜は深く、暗かった。

道の両側には人影はまばらで、通りかかる人々は彼らの恐ろしい様子を見て、次々と逃げ去っていった。

胸がドキドキと鳴り、状況は非常に不利だった。彼女を助けてくれる人はいない。自分の力で切り抜けるしかなかった。

「すみません、もう遅いので、また今度飲みましょう...」彼女は唇の端を引き上げて微笑み、冷静に言った。

「何を無駄話してる、早く車に連れ込め。誰かに見られたら面倒だ」

他の二人はすでに我慢できず、一歩前に出て初陽の手首を掴んだ。

初陽は身をかわし、振り返って走り出した。

彼女はある程度の身のこなしを持っていたが、同時に四人の筋骨隆々の男性と対峙するには、成功の見込みはないと自覚していた。

まだ二歩も走らないうちに、髪の毛を強く引っ張られ、冷たく笑う声が聞こえた。

「美人さん、どこへ逃げるつもり？まだ遊びも始まってないのに、どこへ行くんだい？」

頭皮から鋭い痛みが走り、初陽は歯を食いしばって痛みに耐え、振り返って話した男を見た。

男は黒い服を着ており、他の三人に比べると見た目はまだ端正だった。

「あなたたち、何をするつもり？誰があなたたちを寄越したの？」

彼女の瞳には恐怖も動揺もなく、その美しい目は月明かりの下で淡い光を放っていた。

恐れを知らず、身体からは冷たさだけが漂っていた。

「田中越兄貴、もう時間がない、早く彼女を車に乗せよう...」暗闇の中で他の男たちが一斉に動き、初陽を拘束し、路肩に停めてある車へと連れていった。

初陽は抵抗しなかった。抵抗しても無駄だと知っていたので、むしろ力を温存し、機会を見て行動することにした。

彼女の突然の静けさに、男たちの目に驚きの色が浮かんだ。

こんな女性は珍しい。

捕まり、縛られても、泣き叫ばず、極めて冷静だった。

男たちは留まる時間がなく、初陽を車に投げ込み、布切れを取り出して彼女の口に詰め込んだ。

そして、太いロープを取り出して彼女の手足を縛ろうとした。

車はエンジンをかけ、夜の闇に紛れて、揺れながら繁華街から離れていった。

赤信号、青信号と進み、走っては止まりの繰り返し。

初陽の額には冷や汗が浮かび、目を細めて窓の外を見つめていた。

突然、見覚えのあるナンバープレートの車が彼女の視界に入った。