第86章 どこへ行くつもりなの

救急室に入ると、彼女をベッドに寝かせ、一瞥もせずに振り返り、後ろについてきた震え上がっている医師や看護師たちを見た。

「彼女の足の傷を包帯で巻いてくれ……」

「はい、墨野さん……」すぐに医師が応じ、看護師に医療器具を持ってくるよう指示し、忙しく動き始めた。

傷を洗浄し、消毒し、包帯を巻く。

始めから終わりまで、彼の瞳は一瞬も初陽の足から離れなかった。

彼女の足に包帯が巻かれ、傷の処置が完了するまで、彼のずっと寄せられていた眉間がようやく少し緩んだ。

表情がいったん緩むと、体のさまざまな病理症状がすべて押し寄せてきた。

目の前がちらつき、彼は足元がふらつき二歩後ずさった。

背後にいた村田城がすぐに彼を支えた。

「ボス、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ……」彼は首を振り、まっすぐ立とうとした。

力が抜けるような感覚に襲われ、目の前はさらにめまいがした。

「医者、早く来て、彼の傷を包帯で巻いてくれ……」村田は厳しい声で叫んだ。

医師と看護師たちは、再び星野寒の周りに集まった。

「体温が高く、失血過多です……すぐに消毒して止血し、傷を縫合します。」

初陽はベッドに座り、目を伏せたまま、体はひどく疲れていた。彼女はベッドの頭に寄りかかり、軽く目を閉じた。

耳には様々な混乱した低い叫び声が聞こえ、少し眉をひそめ、いらだちを見せた。

目を開けると、目に入ってきたのは星野寒の血の気を失い、紙のように青白い顔だった。

視線を下げると、左腕は血まみれで肉がむき出しになっていた。

血の衣は、もはや元の色がわからないほどだった。

こんな寒の姿は見たことがなかった。彼はいつもきちんとしたスーツを着て、堂々とした姿だったのに、いつからこんなに惨めで、寒らしくない姿になったのだろうか?

村田は自ら手を動かし、彼の傷を縫合した。

麻酔を拒否し、彼は歯を食いしばって、針と糸が肉を貫いていく痛みに耐えていた。

この種の痛みは、普通の人なら大声で叫ぶほどだが、彼はただ歯を食いしばって耐え、一言も叫ばなかった。

この男の自制心と忍耐力はなんと強いのだろう。痛みさえも耐え、顔色一つ変えずに耐えることができる。

始めから終わりまで、彼の視線は常に彼女に向けられ、少しも動かなかった。

額に汗を浮かべ、目の前がぼやけていても、彼はじっと彼女を見つめていた。