第103章 あなたも素晴らしい

橋本奈子は専門的な演技学校を卒業したわけではなく、最初は素人モデルだった。後に大物と関係を持ち、その大物が彼女に惜しみなく金を使い、彼女を売り出した。

映画やドラマに投資し、ついでに橋本奈子を監督に紹介した。

時間が経つにつれ、彼女自身の美貌もあって、少しずつ芸能界で名を知られるようになった。

演技力については、「ふん」という言葉でしか表現できないほどだった。

しかし今日の奈子の演技は、ぐんぐん上達していた。初陽を見る時の憎しみに満ちた眼差しは、見る者の心に突き刺さるほどだった。

元々奈子の演技を評価していなかった雪村監督は、モニターを興奮して見つめていた。

火薬の匂いが充満し、火花が散る様子は、まさに彼が求めていた激しいシーンだった。

奈子が警告を発すると、初陽は淡々とした表情で、唇を緩め、優しい声で話すが、その一言一言が奈子の心の奥深くまで突き刺さった。

劇中の沢田蛍は、まさに柔らかな外見に刃を隠し、笑顔の中に棘を持つ白蓮の花のような存在だった。

一見弱々しく見えるが、実は骨の髄まで冷酷無情な女だった。

奈子が演じる速水静は、おおらかで策略を持たず、率直な性格の女性だった。

二人の応酬、二人の言い争い、戦いはエスカレートしていった。

その場にいる全員が、息を殺して見守っていた。

この10分間に及ぶシーンが、なんとNGなしで撮れたのか?

「カット、よし、よし、このシーンは二人とも素晴らしい演技だった。目線も表情も完璧だ。メイク直し、メイク直し、次のシーンをすぐに始めるぞ…」雪村監督はカットをかけると、すぐにメイクスタッフを呼び、二人の化粧直しをするよう指示した。

大勢のスタッフがわっと集まってきた。奈子の今日の演技があまりにも素晴らしかったため、何人かのスタッフは初陽を無視し、奈子ばかりを褒め称えた。

「奈子さん、まさか演技もこんなに上手いとは思いませんでした…」

「あの目線、あの表情、監督も今褒めてましたよ?」

「そうですね、これぞ実力派の演技ですね、奈子さん、本当に素晴らしい…」

「そうそう、素晴らしい、この完成された演技なら、来年の助演女優賞にノミネートされるのは間違いないでしょう。」

奈子は得意げに眉を上げ、初陽を横目で見て、傲慢に鼻を鳴らし、その得意げな様子を隠そうともしなかった。