第113章 過去を懐かしむ

初陽は徳陽を一周したが、優奈の影も見つけられなかった。

学校の門の前に立ち、彼女は眉をひそめ、疑問でいっぱいだった。

星野寒がゆっくりと彼女の側に歩み寄り、軽くため息をつき、口角を少し上げた。

「優奈を探してる?」

初陽は彼を無視し、冷たく鼻を鳴らして何も言わなかった。

「彼女は用事があって家に帰ったよ。たまたま僕に会ったから、君に伝言を頼んだんだ」寒は怒る様子もなく、むしろ穏やかに眉を上げ、目尻に笑みを浮かべた。

初陽は思わず冷たい息を吸い込み、拳を握りしめ、寒を睨みつけた。

「なんで早く言わないのよ、この学校を一周も回らせて……」彼女は歯ぎしりするほど腹を立て、彼の顔を殴りたい衝動に駆られたが、最終的に拳を握りしめ、心の中の怒りを抑えて、憤りを込めて低く唸った。

寒は澄んだ目で周囲を見回し、声を落として感慨深げに言った。「何年ぶりだろう、徳陽高校に戻るのは。僕たちはここで出会い、知り合ったんだ。せっかく来たんだから、少し回って過去を懐かしむのも悪くないだろう」

初陽は血を吐きそうなほど怒り、顔色が青くなったり白くなったりした。

「誰が過去を懐かしむのよ?私はあなたに会わなかったらよかったのに……」彼女は恨みがましく低い声で冷笑した。

もし選べるなら、もし15年前に戻れるなら、彼女は涼城から逃げ出し、徳陽には来なかっただろう。

そうすれば、寒に会うこともなく、その後のすべてが起こらなかったはずだ。

しかし、運命は皮肉なものだ。

周囲の空気が、突然冷たくなった。

寒の目尻の笑みが消え、瞳の奥に一瞬の痛みが走り、ポケットに入れていた手がきつく拳を作った。

初陽の言葉は傷つけるものだった。彼女の簡単な一言で、彼の過去への憧れや美しい思い出が粉々に砕かれた。

つまり、初陽の心の中では、彼らの出会いは間違いだったのだ。

「構わないよ、僕が懐かしむだけで十分だから」寒は心の痛みを押し殺し、平静を装って言った。

初陽は無意識に唇を噛み、彼を横目で見た。彼の目に浮かぶ傷ついた表情を見逃さなかった。

しかし、彼の痛みはどこから来るのだろう?

笑止千万だ。偽善的な男が、また彼女の前で芝居を打っているのか?

初陽は黙ったまま、顔を背け、彼を見なくなった。複雑な思いが波のように心に押し寄せた。

空気は静かで、冷たかった。