第165章 初陽、あなたは本当にかっこいい

松田靖は隠し立てできず、すぐに頷いた。

「橋本奈子さんの側にいる助手です。彼女はずっと私たちの前で、あなたがどれほど奈子さんをいじめたか、何度も水に落ちるシーンを撮らせて、最終的に重い風邪をひかせ、丸一ヶ月も入院させたと言っていました。それから彼女の助手はこうも言いました。奈子さんは度量が大きく、退院したばかりなのに監督を探して、あなたのシーンを増やすよう頼んだのに、あなたはまだ彼女に良い顔をしない。今回もどうやって彼女をいじめるつもりなのかと」

初陽はひと笑いし、その笑い声は澄んで美しかったが、心まで凍らせるほど冷たかった。

「ふん……面白いわね、私のことをあまりにも冷酷に描写しすぎじゃない？それで、ずっと橋本奈子の助手が話していたの？」

松田靖は急いで頷き、初陽の心中を読み取れず、慌てて付け加えた。

「はい、全部彼女の助手が言っていました。彼女自身は一言も口を開きませんでした。態度は傲慢極まりなく、まるで御局様のようで、私たち奥様方には一瞥もくれませんでした」

「これは本当に面白いわね。彼女を囲っている人物の権力がそんなに大きいの？あなたたちのような人までが恐れるほど？その人物、誰か知ってる？」初陽は口元の笑みを消し、沈んだ声で尋ねた。

松田靖は周囲を窺い、声を潜めて答えた。「はい、この人物はただものではありません。裏では多くの違法行為を行い、配下には千人以上の兄弟分がいます。涼城では彼は裏社会のボスで、誰も彼に逆らえません。その人物は沢田鶴という名で、50歳ですが、見た目は40歳にも見えないと言われています。見目麗しい顔立ちの持ち主です。山賊の頭目のような男で、女性関係は涼城の外まで並ぶほど多いとか……」

沢田鶴か？なるほど、奈子を囲っているのは沢田鶴だったのね……

これは、本当に面白くなってきた。

初陽はちょうど沢田鶴に近づく方法がなく、この並外れたボスについて知りたいと思っていたところだった。

今や、そのチャンスが訪れたというわけだ。

「橋本奈子は、まだ温泉のところにいるの？」初陽は思考を切り替え、唇を曲げて微笑みながら尋ねた。

松田靖は何度も頷き、震える両手で初陽の腕をつかんだ。