橋本奈子の指摘によって、彼女たちはようやくこの一件を思い出した。当時はまるで荒唐無稽な話だと思っていた。
常に女性関係がなく、スキャンダルとは無縁で、高みにいる星野社長が、どうして新人女優をキャスティングコーチするなんてことがあり得るだろうか?
今、この古い噂が蒸し返され、葉田初陽の名前と結びつけて考えると、頭の中で何かがひらめいた。
奥様たちは驚愕し、皆顔色を失い、信じられないという様子で目を見開いて奈子を見つめた。
「これは...もしかして葉田初陽が星野社長とスキャンダルを起こした新人女優なの?」広田夫人は不安げに尋ねた。バスタオルを握る手のひらには冷や汗が滲んでいた。
奈子は冷たく笑い、美しい瞳には嘲りが満ちていた。
「ふん...もちろん彼女よ。他に葉田初陽なんていないでしょう?」
広田夫人は目の前が真っ暗になり、体から力が抜けるように感じ、その場に崩れ落ちた。冷たい石の床が肌に染み渡り、不思議な寒気が波のように押し寄せてきた。
「いいえ...まさか?初陽は...彼女は...」
「そう、初陽こそが星野社長にキャスティングコーチされた唯一の新人女優よ。星野社長の力がなければ、どうして彼女が『華麗なる歳月』という映画の重要な役、女三号を演じることができたと思う?初陽は星野社長のベッドに上がった最初の女で、処分されるどころか、星野社長という高枝にしがみついて、一路上り詰め、星野社長の寵愛を一身に受けている女よ」奈子は瞳の奥に暗い光を宿し、歯を食いしばって言った。
奈子の言葉が落ちると、周囲から驚きの声が上がった。多くの奥様たちはすでに恐怖で体が弱り、床に倒れ込み、中には臆病な人もいて、そのまま気を失ってしまった。
「じゃあ...長谷川夫人は...彼女は今...」広田夫人は苦しそうにつばを飲み込み、震えながら尋ねた。
奈子は首を横に振り、非常に残念そうにため息をついた。「片手を潰されて、長谷川企業はすでに破産したわ...皆さん、私が明かすべきことは全て話したわ。私としては仁義を尽くしたつもり。あとは自分で気をつけなさいね...」
広田夫人の顔は真っ青になった。奈子の言葉は頭を殴られたようなショックで、彼女をくらくらさせ、もう正気に戻れなくなった。