第204章 もう引き返せない

彼は本当に怖かった。石川桐人が不注意で発砲し、自分の命を奪ってしまうのではないかと。

それ以上に恐れていたのは、苦労して手に入れた地位と身分が、桐人の一言で完全に覆されてしまうことだった。

石川桐人には、そんな力があった。

桐人は手の短銃をひっくり返し、銃の柄を持ち上げて、直接沢田鶴の顔面に叩きつけた。

「もう一度、人を遣って星野寒を殺そうとするつもりか?奴の部下が飯だけ食ってると思ってるのか?二日と経たずに、黒幕が誰か突き止めるぞ。そうなったら、お前は死を待つだけだ。今、お前は俺の周到な計画を全て台無しにした。前にも言っただろう、寒とは正面から対決するなと。結局、お前は俺の忠告を聞かなかった。自ら死に道を選ぶなら、俺がそれを叶えてやろう……」

血が飛び散り、桐人の顔にまで及んだ。桐人は短銃を投げ捨て、手を上げて顔の血を拭うと、部屋を出ようとした。

鶴は鼻から流れる血も気にせず、ドサッと音を立てて桐人の足にしがみつき、彼の歩みを止めた。

「桐人、見捨てないでくれ、助けてくれ……お前が出れば、必ず成功する。この機会に乗じて、星野寒を蒼山で完全に始末しよう。奴が死ねば、星野グループどころか涼城全体が完全に指導者を失う。その時、我々は高値で星野グループの株を買い取り、一気に寒の名義下の全資産を併合できる。星野グループを掌握すれば、涼城の経済の命脈は全て我々の手中に落ちる。こんな近道は願ってもないことだ、見逃すわけにはいかない……」

桐人は足を上げて鶴を強く蹴り、鶴を見る目は、まるで吐き気を催す獣を見るような、あるいはすでに死んだ人間を見るような目だった。

愚かすぎる。こんな単純な道理も鶴には理解できず、それでいて間違いを重ねようとしている。

「鶴、お前はまだ分かっていない。もし寒が死んだら、涼城は死の街になる。彼以外に涼城の経済の命脉を握れる者はいない。誰に代えても、涼城の民は従わないだろう。星野家の人間でなければ、どうやって星野グループを率いるというのだ。たとえ率いることができたとしても、それは空っぽの殻に過ぎない。俺が欲しいのは、星野グループではない……」桐人は軽く笑い、目に冷たい光を宿して鶴を見つめながら言った。

鶴はまだ諦めきれなかった。彼はこの恨みを飲み込めず、だからこそ星野寒に手を下したのだ。