朝食事件以来、広田崇が病室に何か食べ物や飲み物を持ってくると、初陽が口を開く前に、星野寒はすぐに広田に鋭い視線を投げかけた。
広田は星野社長に長く仕えてきたので、彼の意図を理解していた。
そのため、有名店から取り寄せた血を補う薬膳スープ、一流シェフが丹精込めて作った栄養食、海外から空輸された珍しい果物など、すべてが次々と初陽の前に並べられた。
初陽も遠慮せず、すべて受け取った。
もう食べられないとなると、星野社長は目を輝かせ、喜んでゴミ箱役を買って出て、残りをすべて平らげ、少しの食べ物も無駄にしなかった。
広田はまぶたをぴくぴくさせながら、心の中で驚嘆した。
彼の社長は、もはや正気を失いかけていた。
以前、広田が星野社長を見てきた中で、他人の食べ残しを、こんなに満足げに食べる姿を見たことがあっただろうか?
彼の記憶では、社長は紛れもない潔癖症だった。
他人が彼の使ったものに少しでも触れることを許さなかったのに、今や社長は無上の喜びを表す表情を見せている。一体どうしたというのか!
彼は気づいた。この事故以来、社長は変わった。初陽に対する態度は飛躍的に変化していた。
甘やかし、寛容さ、彼女の自由を底なしに許すこと。
もうだめだ、社長は完全に取り憑かれてしまった。一人の女性のために、もはや自分らしさを失ってしまった。
以前のクールさも、ツンデレも、冷酷さも、強引さも、禁欲的な雰囲気も、すべて消え去ってしまった!
……
三日後、星野は退院した。初陽は彼の並外れた回復力に驚嘆した。
退院するとすぐに、彼は広田に涼城へ戻るよう指示した。
初陽のシーンはすでに撮影が終わっていたので、彼女も星野と一緒に涼城へ戻った。
涼城に戻ると、星野は自ら初陽を家まで送った。
初陽の家の玄関に立ち、星野は眉を寄せ、静かに初陽をしばらく見つめた。
「家でしっかり休んでくれ。『華麗なる歳月』は今のところ君のシーンはない。三日後、この休憩期間を利用して、可美に君のためにいくつかの広告契約を手配させよう……」
「あなたは風影会社の内部スタッフの仕事配分にも口出しできるの?」初陽は穏やかな表情で、静かに尋ねた。
「口出しはできないが、私が差し出すお金を、風影会社が断るとは思えないがね?」