「黒川源、もう後悔するようなことはしないで。人生は一度きり、あまりにも多くのことを見逃し、後悔し過ぎたら、残された時間を使って、大切にすべき人を大事にするべきよ」
結局は友人として、彼女は彼を引き止め、それは自分自身を助けることでもあった。
それに、彼女も血の通った人間だ。絶望に陥っている人に冷たく接することなどできなかった。
「おじいさん……」源の沈んだ心が、一気に強く揺さぶられた。彼は小さな声で呟いた。
「そう、あなたは前に進むべきよ。おじいさんは今、あなたの支えと励ましが必要なの。源、これ以上自分を深い絶望に追い込まないで。もしあなたが気づかなければ、おじいさんに何かあったら、あなたは……」
初陽の言葉が終わらないうちに、源は突然彼女から手を離し、勢いよく立ち上がった。
急に立ち上がったせいか、彼は頭がくらくらし、体がわずかに揺れた。
初陽も立ち上がり、急いで彼を支えた。
「焦らないで、興奮しないで、ゆっくり落ち着いて。源、あなたはもう好き勝手に振る舞うプレイボーイではないわ。黒川グループの重責を引き継ぎ、あなたの責任を背負うべきよ。それに、沈川の死は他殺だったはず。これからの日々で自分を強くし、真犯人を探し出して、兄の仇を討つべきよ」
源の沈んだ瞳が、徐々に生気を取り戻していった。
初陽のそっと囁くような言葉が、彼の心に響き、一瞬のうちに目が覚めたかのようだった。
「初陽、ありがとう……」
彼は熱のこもった目で初陽を見つめ、瞳の奥には涙の光が揺れ、長い間収まらない感情が渦巻いていた。
もう一言も言わず、彼が振り返って去る時の一瞥で、彼女を心の奥深くに刻み込んだ。
時は流れ、未来のある日、初陽はようやく気づくことになる。あの夜の彼女の言葉が一人の人間を救ったこと。それはただその人の魂を救っただけでなく、彼の信念と理想も救ったのだと。
かつては花から花へと舞い飛ぶ遊び人だった彼が、一夜にして性格が大きく変わり、それからは、ただ一人の女性のためだけに笑顔を見せ、喜怒哀楽を表すようになった。
世の中にどれほど素晴らしく美しい女性がいても、もはや彼の目には入らなかった。彼の心も、思考も、あの夜、ある女性のもとに置き去りにされていたのだから。