初陽は服を片付け、きちんと畳んでスーツケースに一枚ずつ入れていた。
優奈は横に立ち、両手を腰に当て、小さな顔を曇らせ、口を尖らせて不機嫌そうに、また一枚ずつ服をスーツケースから取り出していた。
「初陽、橋本奈子がそんなに親切なわけないでしょ?彼女が悪意を持って、あなたに仕返しする機会を探してるんじゃないかって心配よ。星野さんに話して、雪村監督と相談して、このシーンをキャンセルしてもらうわ。予感がするの、奈子は絶対何か陰謀を企んでるわよ」
初陽は無奈に微笑み、手を伸ばして優奈の頬をつまんだ。
「私の優奈ちゃんね、あんなに大勢の人がいるのに、彼女が私に何ができるっていうの?それに、私だって人に好き勝手にされる柔らかい柿じゃないわ。彼女が一体どんな手を使うつもりなのか、見てみたいくらいよ。心配しないで、今回はあなたの家に用事があって一緒に行けないのは分かってるけど、可美がちょうど仕事の調整ができたから、彼女が私に付き添ってくれるわ。だから心配しなくていいのよ」
優奈は不満そうに初陽の手を払いのけ、瞳に心配と焦りを浮かべながら、初陽の服をしっかりと掴んで離さなかった。
「初陽、明らかな攻撃は避けやすいけど、陰からの矢は防ぎにくいわ。あなたには火眼金睛があるわけじゃないんだから、どうやってあの妖精たちの悪だくみを見抜けるっていうの?あなたがどんなに強くても、結局は一人の女性よ。もし何か起きたら、逃げることもできないかもしれないわ」
初陽は目を輝かせ、じっと優奈を見つめ、小さくため息をついた。この馬鹿な子は、なんてかわいいんだろう。
知り合ってからそれほど長くないけれど、優奈の優しさは十分に感じ取れていた。
前世では、優奈も運命に翻弄された不幸な人だった。
初陽と優奈は同じように、運命に恵まれなかった哀れな存在だった。
この世で初陽は転生し、自分の運命の軌道を変えるだけでなく、優奈の悲惨な運命も変えようと決めていた。
「いい子ね、でも特別扱いはできないわ。映画撮影では常に様々なアクシデントがあるものよ。もし彼女が本当に悪だくみをしているなら、今回行かなくても、次回も逃れられないわ。それに葉田初陽は問題から逃げる人間じゃないわ。来るものは受け止めるしかないでしょう…」初陽は優奈の柔らかい髪を撫で、唇を引き締めて微笑んだ。