薔薇園の高額パイナップルライス

木村伊夜がこの状況について全く知らないことを思い出した。

宵月司星は細長い鳳凰の目を急に細め、反問した。「生活アシスタントの意味が分からないのか?」

伊夜の心臓が「ドクン」と沈んだ。

しかし彼女はすぐに目を輝かせ、背筋を伸ばした。「じゃあ...給料は上がるの?」

彼女は今はただお金が欲しいだけで、他のことはどうでもよかった。

それに自分が深く愛している男性にキスするなんて、少しも損じゃない、むしろ大儲けじゃない!

「給料が上がらなくてもいいわ!」

伊夜は司星の目に脅しの色が見えたので、すぐに言葉を引っ込めた。

彼女は振り向いて、自分が作ったパイナップルライスを両手で持ち、司星に差し出した。「一杯のご飯で、二十万!」

司星:「……」

薔薇園の天価パイナップルライス?

彼は目尻を軽く引きつらせながら、見た目の悪いパイナップルライスを一瞥した。この豊かな香りがここから来ているとは信じられなかった。

このパイナップルを切る包丁さばきは、ご飯の香りに全く見合っていない。

「誰がそんな自信をくれたんだ?」司星は両手をポケットに滑り込ませ、パイナップルライスを受け取らなかった。

伊夜は小さな顔を上げ、小さな唇を尖らせて懇願した。「食べてみてよ...私の包丁さばきは下手だし盛り付けもできないけど、ご飯は絶対においしいから!」

正直に言うと、彼女はパイナップルライスしか作れなかった。

しかも他の人のために作ったことはなく、だから見た目を気にしたことがなかった。おいしければそれでOK!

「一口食べるのに、いくらかかる?」

伊夜は花のように笑った。「一万?」

司星:「……」

彼は彼女を皮肉っただけなのに、この女は本気で一口の値段を計算してきた!

「山崎執事にお金を取りに行け」司星は片手を出してパイナップルライスを受け取り、身を翻して立ち去った。

伊夜はすぐにピースサインを作って勝利を宣言し、小さな足取りで彼の後を追いかけた。

「司星、これからは毎日あなたにご飯を作ってもいい?三食パイナップルライスで、一食二十万、一日六十万、五日間作るわ!」

この小さな計算をしながら、伊夜は心の中でうきうきしていた。

司星のお金がこんなに簡単に稼げるとは思わなかった。五日間ご飯を作るだけでお父さんの医療費が払えるんだ!