それは私の体から抜け出た魂です

木村伊夜はダイニングテーブルの反対側に縮こまり、ナイフとフォークを持ち上げて宵月司星に向けた。「近づかないで」

彼女はもともと司星を少し正気に戻そうと思っていた。

彼が自分の顔を気に入っているなら、醜い姿を見せてやればいいと思ったのだが、結果は……

自分自身を危うく罠にはめるところだった。

司星のレベルは高すぎて、彼女はまだ認めざるを得なかった。「さっきあなたを誘惑したのは、絶対に私じゃないわ」

伊夜は真剣な表情で司星を見つめ、手に持った殺傷能力のないナイフとフォークをまだ武器として握りしめていた。

彼女は付け加えた。「それは私の体から抜け出した魂よ」

司星は「……」

お前の戯言を信じるか。

彼は眉を軽く上げ、長い指でナプキンを取り、優雅に気品高く唇を拭った。

「何か食べなさい」司星の眼差しは冷静だった。

伊夜は警戒しながら彼を見つめ、そして自分の元の席の前にある洗練された食器を見た。

司星は本当に彼女に優しかった。

この態度、この待遇は、確かに普通の生活アシスタントが受けるべきものではなかった。

しかし、彼女も本当にこれ以上耐えられなかった。

「私は……パンを少し持って上に行くわ」

伊夜の態度は、徐々に不思議なほど柔らかくなっていった。彼女は手のナイフとフォークを置いた。

トーストを二切れ挟み、ジャムもつけず、コーヒーも目玉焼きも取らずに、皿を持って階段を上がった。

強がることもなく、一言も言わなかった。

司星は軽く眉をひそめた。「彼女に持って行ってあげなさい」

彼は気づかれないように少し顔を横に向け、視線の端で見ると、この女性の後ろ姿にはどこか寂しさがあるように感じた。

しかし、その寂しさは……

一体どこから来るのだろうか?

メイドが伊夜の残した食事を上に運んだが、彼女はドアの外で断られた。「ありがとう、結構よ」

司星は朝食を済ませた。

彼は手を上げ、眉間を軽くマッサージしながら、心の中に何か焦りを感じていたが、理由がわからなかった。

あの女性は、一体どうしたのだろう?

「若様、私が上がって様子を見てきましょうか?」山崎執事は傍らに立ち、恭しく尋ねた。

「必要ない」司星は立ち上がり、薔薇園を後にした。

……

歌姫星夏が帰国!