木村伊夜は小さな紙皿を置いた。
彼女は唇についたクリームを軽く舐め、桃の花のような瞳が波のように輝き、眩しいほどに光り輝いていた。
しかし、その瞳の奥には、狡猾な笑みが浮かんでいた。
伊夜は宵月司星の方向を観察した。彼は今、誰かと会話をしており、自分に構っている余裕はなさそうだった。
そこで、彼女は思い切って...男子トイレに入った。
「写真はもう手に入れた。五分後に取引しよう。トイレの窓からメモリーカードを渡す」
突然、男の声がトイレの外から聞こえてきた。
伊夜は洗面台にもたれかかり、海藻のように緩やかにカールした長い髪を無造作に指で弄んでいた。
「カチャッ」
トイレのドアが突然開いた。
記者は伊夜を見て驚き、すぐに外に出てトイレの標識を見上げた。確かに男子トイレだった。
彼は奇妙な表情で彼女を見つめ、再び中に入ってきた。
「驚いた?意外だった?」
伊夜はゆっくりと顔を上げ、目が三日月のように笑みを浮かべ、明るい瞳と白い歯が光り輝いていた。
手首に少し力を入れると、彼女は洗面台から身を起こした。「そのもの、自分から渡す?それとも私が手伝おうか?」
伊夜は軽やかに手首を動かしながら、頬の笑みは少しも消えなかった。
幸い、展開は前世と全く同じだった。
彼女は賭けに負けることなく、早くからここで彼を待っていたのだ。
「何のことだ?」記者は両手を背中に隠した。「お前は誰だ?ここは男子トイレだぞ!」
「男子トイレがどうしたの?」伊夜は赤い唇を少し上げた。「同じしゃがんで用を足す場所じゃない。何か違いでもあるの?」
記者:「……」
こんなに厚かましい相手は初めてだった。
「もう無駄話はいいわ」伊夜は笑みを引き締め、少し不機嫌そうに唇の端を歪めた。「メモリーカードを渡して」
彼女は記者に手を差し出した。
首にかけた天使の瞳が、かすかな蜜色の光を放っていた。
伊夜はまだ一度も異能の力を試したことがなかった。ちょうどいい機会に武打システムを使って、この男を豚の頭のように殴りつけてやろう。
「生意気な小娘が、大の男に挑発するとはな?」記者はメモリーカードを握りしめ、少し悪意のある目つきで伊夜を見た。
伊夜は眉を少し上げた。「へぇ、大の男ね」