翌日の朝。
木村伊夜が目を覚ますと、目が少し腫れぼったく感じた。鏡を見てみると、案の定、少し腫れていた。
なんてこと……
昨夜はグズグズと泣いていたなんて、きっと何かに取り憑かれていたに違いない。そんなに脆くなんてないはずなのに!
「起きたか?」宵月司星のやや掠れた声が、突然彼女の背後から聞こえてきた。磁性を帯びた魅惑的な声だった。
伊夜の背中が一瞬こわばった。
しかし、すぐに平然と振り返り、明るい笑顔を見せた。「おはよう、若帝!」
まるで昨夜のことなど何も起こらなかったかのように。
彼女はもう決めていた。堂々と司星を一生愛そうと試みること、臆病者のように隠れるのはやめようと!
「ああ」司星は洗面所のタイル壁に慵懶と寄りかかり、指を髪に通して乱れた髪を軽く整えた。
漆黒の瞳で腫れた目を調べている少女をちらりと見やると、彼は手を伸ばして冷たいタオルを差し出した。
「これで冷やすといい」彼は薄い唇を軽く動かした。
伊夜は驚いて横目で彼を見つめ、それからゆっくりと視線を下げ、そのタオルに落とした。
司星に遠慮することなく、彼女はタオルを取り上げると、トントンと近づいていき、彼の頬にちゅっとキスをした。
「ありがと」彼女は明るく笑った。
司星は突然固まり、タオルを差し出した手さえも宙に浮いたまま、少し驚いて少女を見つめた。
昨夜はまだ自分に興味がないと言っていたのに……
今朝は、彼女から積極的にキスをしてきたのか?
「木村伊夜」司星は奇妙な表情で彼女を見た。「また何か企んでいるのか?」
伊夜:「……」
いたずらが多すぎて、少し優しくするだけで、何か裏があると思われてしまうのだろうか?
「別に何もないよ」少女は目をパチクリさせた。
澄んだ桃の花のような瞳は純粋で、水面が揺れるように時折波立っていた。
司星の表情が微かに動いた。「本当に何もないのか?」
伊夜の笑顔が明るければ明るいほど、彼は彼女を信じなくなった。
案の定、少女は目を三日月のように細め、白い歯を見せて「本当に何もないよ」と言った。
司星の目尻が軽く引きつった。
前回彼女がこんな風に笑った時、彼のスマホを使って工藤朔空に奇妙なメッセージを送ったことを思い出し、冷笑した。
「信じてくれなくてもいいよ」伊夜は口をとがらせた。