私は本当に病院に行きたくない

加藤吉平は瞼を伏せ、薬瓶のラベルを見つめていた。澄んだ瞳には、幾分か恨めしげな色が宿っていた。

「心臓病?」彼の声は軽やかだった。

まるで幽霊のように虚ろで空虚に聞こえた。

彼のまつ毛が軽く二度震え、蝶が羽ばたくように、濃密で長い。「病院、なぜ?」

木村伊夜は深く二度息を吸った。

今回の発作は確かに予想外だったが、幸い深刻ではなく、薬で一時的にコントロールできる。

今は少し回復していた。「行きたくない」

言い終わると、彼女は顔を横に向けて吉平の視線を避け、さらなる問題を避けるためにカフェを出ようとした。

今の彼女には、クズに対応する余裕などなかった。

しかし伊夜が二歩歩いたところで、自分の服が誰かに掴まれているのに気づいた。振り返ると、「何をしているの?」

吉平は唇を軽く噛み、少し委屈そうに彼女を見つめながら、彼女の服の端をゆっくりと揺らした。「一緒に行くよ」

一緒に行けば、彼女も行きたくないとは思わなくなるかもしれない。

伊夜:「……」

誰か、この妖艶な男を連れて行ってくれ。

彼女は俯き、少し頭痛がするように眉間を押さえ、それから吉平の手を払いのけた。「加藤先輩、今日はありがとう。でも本当に病院には行きたくないの」

少なくとも、彼が安城に来る前には、病院に行くわけにはいかなかった。

彼女は彼が来るのを待ち、十分な保証を得て、病院に彼女の病状に関するすべての情報を封鎖させ、宵月司星から隠し通す必要があった。隠せるだけ隠すつもりだった。

吉平は不満そうに口をとがらせた。「わかったよ」

彼は手を引っ込め、うつむいて長い指を重ね合わせ、互いにくるくると回し始めた。

伊夜は彼の今の子供のような様子を見て、先ほど石川家を破産させ、石川美雪をカフェから追い出した男が同じ人物だとは信じられなかった。

「君は…大丈夫?」吉平はまぶたを少し持ち上げ、彼女をちらりと盗み見て、探るように尋ねた。

「うん、大丈夫」伊夜はうなずいた。

彼女は胸のあたりをさすり、ほぼ回復したと感じた。少し休めばよくなるはずだった。

吉平は薄い唇を開いた。「そう」

また軽やかな一言だったが、その声には微かに喜びと嬉しさが含まれていた。

「あの…加藤先輩、そろそろ時間だから、授業に行かなきゃ」伊夜は目尻を軽く引きつらせた。