「私の上には木村家が守ってくれている」

デブ三は麻袋を担いで、木村伊夜を荒れ地の山奥に放り投げた。女性に対する思いやりなど微塵もない様子だった。

「兄貴、俺たちが先に楽しませてもらうって話じゃなかったのか……」

中デブとデブちゃんは大デブを物欲しげに見つめ、分厚い唇からよだれが垂れそうになっていた。

「楽しむって、ふざけんな!」大デブは平手打ちを食らわせた。

彼は足で麻袋を蹴り、憤慨した表情で言った。「この生意気な女に格闘技の心得があるって気づかなかったのか?奇襲で気絶させなかったら、とっくに俺たちはくたばってたぞ!」

楽しむどころか、百万の報酬も水の泡になるところだった。

天秤にかければ、当然この憎たらしい女を縛って親分の前に連れて行き、まずは金を手に入れることが先決だ!

「こんな美人なのに、もったいないな……」

デブちゃんはしゃがみ込み、諦めきれない様子で麻袋をめくり、手を伸ばして触ろうとした。せめて少しでも得をしたかったのだ。

「ドン!」

大デブは彼を蹴り飛ばした。「目を覚まさせるな!さもないとこの女にまた袋叩きにされるぞ!」

彼は自分の腰とお尻を触りながら、まだ痛みと痺れを感じていた。二発殴られただけで恐ろしさが残っていた。

「俺たちに仕事を頼んだあの女はまだ来ないのか?」

デブちゃんは恨めしそうに麻袋を見つめた。伊夜の姿を想像するだけで、欲求不満を感じずにはいられなかった。

めったに見られない絶世の美女を捕まえたというのに……

まさか勝てないからといって手も出せないなんて!

「金が欲しければ、余計な口は慎むことだ」石川美雪は黒い革のジャケット姿で、夜の闇から静かに現れた。

彼女は麻袋の前にしゃがみ込み、中を覗いた。

伊夜は気絶させられ、麻袋の中で静かに横たわっていた。手足も縄で縛られ、抵抗する術もない。

「よくやった」美雪は冷笑いを浮かべて立ち上がった。

彼女は本来、伊夜にここまで酷いことをするつもりはなかった。前回カフェでの出来事は単なる軽い懲らしめのつもりだった。

だが彼女が加藤吉平と隠された関係を持っているとは!

加藤家が動き出した途端、石川氏グループは完全に破産し、彼女の父親である石川湯治も贈賄で刑務所送りになった。

「一つ忠告しておくが……この女、かなりの使い手だぞ。俺たちじゃ手に負えないところだった!」