二人を見張り続けて

木村凪咲は考えるのも恐ろしかった。

安城若帝は噂によると特殊な趣味を持ち、さらには彼の男性秘書である工藤朔空との間に何か言えない関係があるとされていた……

彼女が以前、田中祐介に木村伊夜のことを持ち出したのは、一時的にごまかすためであり、ついでに彼女を引き返せない道に引きずり込むためだったに過ぎなかった。伊夜が実際に利用されて宵月司星に対抗できるとは思っていなかった。

「ふん……」

祐介は冷ややかに嗤い、少し妖しげな笑みを浮かべた。「どうやら、お前は妹と若帝の関係をよく知らないようだな……」

凪咲は眉間にしわを寄せた。

彼女が知っているのは、伊夜と司星が親しくしているということだけで、二人の間に何があるのかは知らなかった。

結局のところ、彼女は考えもしなかった……

伊夜がそんな権力者と関係を持てるとは。

「それはありえない」凪咲は思わず考えた。「若帝は明らかに……」

「ゲイだと?」祐介は彼女の言葉を遮り、興味深そうな様子で言った。「宵月司星の昨夜の戦闘力は、ふん……」

彼は軽く舌打ちして首を振り、突然手の中の写真を握りしめ、力強く揉みくちゃにした。関節が白くなるほどだった。「引き続き二人を監視しろ」

凪咲はためらいながらも「……わかりました」と答えた。

彼女はまだ信じられなかった。伊夜が本当に若帝と寝たなんて、彼女に何の資格があって……

「それから、宵月司星の入札書を何とかして手に入れろ」祐介は眉を軽く上げ、無造作に写真をゴミ箱に投げ捨てた。何気ない様子で。

まるで指を動かすだけの簡単なことのように。

「何ですって?」凪咲は美しい瞳を見開き、驚いた様子だった。

彼女にどうして若帝から入札書を奪うような力があるというのか?

「帝晟グループに内通者を送り込んでおいた。連絡を取れ」祐介は無関心そうに指先をなぞった。

これを聞いて、凪咲はようやく安堵のため息をついた。

彼女はもう少しで、絶対に達成不可能な任務を与えられたと思うところだった……よかった。

「蒼也、あなたって本当にすごいわ」凪咲は甘く褒め称えた。

ビジネス界全体でも、おそらく司星に敵対する勇気があるのは祐介だけだろう……これが彼女の男だった。

祐介は軽蔑するように冷笑し、「行ってやれ」と言った。