彼は彼女を無条件に信頼している

宵月司星は眼差しを深め、工藤朔空を見つめながら、彼に何か異変があるように感じた。「話せ、何があった?」

朔空はためらいがちで、どう切り出せばいいのか分からないようだった。

長い間躊躇した後、彼は手にしていたUSBメモリを司星に差し出した。「自分で...見た方がいいと思う」

言葉が落ちるや否や、彼は急に数歩後退した。

司星は手の中のUSBメモリを見つめ、眉をきつく寄せると、それをコンピュータに差し込んでファイルを読み込ませた。

監視カメラの映像を見ながら、男の眼差しは次第に暗くなっていった。「彼女のはずがない」

朔空は肩をすくめた。「君が信じないだろうとは思ったよ」

彼自身も実は困惑していた。木村伊夜が一体なぜこんなことをしたのか。しかし、監視カメラの映像は嘘をつかない。

司星は薄い唇をきつく結んだ。

彼は表情を冷ややかにし、すぐに伊夜に電話をかけようとしたが、携帯電話が突然朔空に奪われた。

「司星、一言忠告しておくよ」

朔空は両手を背中に回し、携帯電話をしっかりと握りしめて隠した。「取締役会全体が今、君を虎視眈々と見ているんだ」

「監視カメラの映像が漏れていないとは保証できない。彼らはもう木村伊夜を調査しているかもしれない」

朔空は表情を引き締めた。「彼女がこうした行動をとった目的はさておき、君が軽率に彼女に連絡すれば、彼女を危険にさらすことになる」

取締役会は、司星が帝晟グループに一人の女性を連れてきたこと、そして彼が非常に寵愛している女性だということだけを知っている。

しかし、その女性が監視カメラの映像に映っていた入札価格を改ざんした木村伊夜だとは知らない。

「何が言いたい?」司星は目を細めて彼を見つめた。

「君の携帯電話は、しばらく私が預かる」朔空は珍しく大胆な行動に出た。「薔薇園にも、しばらく戻らない方がいい」

伊夜と接触する可能性を避けるためだ。

朔空は心配していた。もし伊夜が本当にスパイなら、次は司星を傷つける行動に出るかもしれない。

たとえそうでなくても、取締役会は厳しく監視しており、二人にとって非常に不利な状況だった。

朔空は司星に問いかけた。「木村伊夜を風当たりの強い場所に立たせたくないだろう?」

司星は答えず、まぶたを伏せた。