「誰が遺書を書くことを許したのか?」

安城病院。

秋の午後の暖かな日差しが、純白の病床に降り注いでいた。木村伊夜はもたれかかるように座り、静かに目の前の白い紙を見つめながら、さらさらと文字を書き記していた。

「星夏、見てごらん。何か美味しいものを持ってきたよ」

吉田龍一が食事の入った箱を持ってドアを開けた。彼の声は穏やかで、普段の彼とはまるで別人のようだった。

その声を聞いて、伊夜は一瞬慌てた。

彼女はすぐに紙を枕の下に隠し、無理やり笑顔を作って言った。「龍一お兄さん」

龍一は彼女のその小さな動きを見逃さなかった。

彼の眉がわずかに寄り、穏やかだった瞳も少し深みを増して、何かを見抜こうとしているようだった。

「星夏、何を書いていたの?」

「歌よ」

伊夜は小さな顔を上げ、甘く輝くような笑顔を見せた。彼女のピンク色の唇が軽く上がり、光を放っているようだった。

彼女は龍一に、歌を書くために紙と筆記用具が必要だと言っていたのだ。

しかし龍一は眉をひそめ、半信半疑といった様子で少女の背後にある枕に視線を落とし、その瞳は冷たく澄んでいた。

「そうかい?」龍一は優雅に気品高く伊夜に近づき、ゆっくりと彼女のベッドの端に腰を下ろした。

彼は食事の入った箱を取り出し、蓋を開けると、手作り水餃子の香りと蒸気が一緒に立ち上り、思わず涎が出そうになるほどだった。

「餃子?」伊夜の瞳が少し輝いた。

ここ数日間、龍一は彼女に流動食しか許さなかったため、一日三食はさまざまな種類のお粥ばかりだった。

伊夜は他の美味しい食べ物が恋しくてたまらなかった。

「食べてみて」龍一は軽く笑い、箸を取って自ら餃子をつまんで彼女に差し出した。

伊夜は首を振った。「自分で食べるわ」

彼女は餃子を受け取り、幸せいっぱいに一口かじると、少し汁が溢れ出し、嬉しさのあまり天にも昇る気分だった。

「美味しい、美味しい」伊夜は口をもぐもぐさせながら言った。「龍一お兄さん、これからもうお粥は飲まなくていい?」

もうお粥は飲みたくなかった……

たとえ三百六十種類の変化をつけても、どんなに美味しくても、もうお粥は飲みたくなかった。

「医者の言うことを聞かないとね」龍一は無奈そうに、しかし溺愛するように彼女を見つめ、彼女の頭を撫でた。

伊夜は不満そうに口をとがらせた。