宵月司星の眼差しはますます深くなった。
彼は吉田龍一をじっと見つめ、二人の視線が空中で交差し、まるで火花が散るほど鋭く、互いの間には濃厚な火薬の匂いが漂っていた。
「人を奪いに?」
司星は冷ややかに嘲笑した。
唇と歯の間から絞り出された二文字は、まるで研ぎ澄まされたかのように、鋭い刃を含んで相手に向かって放たれた。
龍一は薄い唇を軽く上げ、遊び心のある笑みを浮かべた。「星夏を迎えに来たんだ。若帝には大目に見てもらいたいものだな」
その言葉を聞いて、司星の周りの空気はさらに冷たくなった。
杉山由夏は数人の傍らに立ち、空気の温度が急に下がったように感じ、かなりのプレッシャーを感じていた。
「木村伊夜は俺の人間だ」司星の瞳は暗く沈んでいた。「吉田若様が人を奪うなどと言う筋合いはないだろう?」
男は手を上げ、伊夜を自分の後ろに引き寄せた。
彼は左足を少し後ろに引き、まるでいつでも龍一と戦う構えを取り、引けを取らない姿勢を見せた。
龍一は軽く笑った。「俺が星夏と知り合ったとき、若帝は彼女という人間の存在すら知らなかったんじゃないかな」
感情に先後関係はないとはいえ、先入観というものはある...彼の星夏が、どうして後から来た男を選んだのだろう?
司星は拳をきつく握りしめた。
手の甲に浮かぶ青筋が、彼の怒りと強い所有欲を十分に示していた。「それで、吉田若様はどうやって奪うつもりだ?」
どんなことがあっても、彼は手放すつもりはなかった。
ただし、伊夜自身が龍一を選んだのなら、彼は強制できないし、彼女を強いることもしないだろう。
「奪う」龍一はゆっくりと一言吐き出した。
安城病院では、黒田隼人の医療チームがすべての準備を整え、伊夜が戻って手術を受けるのをいつでも待っていた。
彼はもう彼女を放任し続けることはできなかった。
「ふん...」
司星は唇の端を軽く引き上げ、冷笑して言った。「ならば試してみろ」
言葉が落ちるや否や、彼はすぐに足を出し、素早く正確に龍一に向かって蹴りを放ち、拳の動きもすぐに続いた。
龍一は身をかわし、腕を上げて彼の攻撃を防いだ。
二人とも身のこなしが非常に優れており、すぐに激しい打ち合いが始まったが、どちらも優位に立つことなく、なかなか勝負がつかなかった。
「龍一お兄さん、やめて!」