19世紀末から20世紀初頭にかけて、世界各地で突如として「異常人類」と呼ばれる存在が現れ始めた。外見は通常の人間と何ら変わりないが、彼らはある特定の分野において常識を超えた能力を発揮する。その現象は世界中に衝撃を与え、多くの研究機関がこの「新しい人類」に注目し始めた。
中国では、これらの存在を「飛鳥(ひちょう)」と名付けた。翼を持ち、空へと羽ばたく進化の象徴として、未来の人類像がそこに重ねられたのだ。しかし、この名付けは中国から始まったわけではない。実は19世紀末、ドイツとフランスの学者たちが古代ギリシャの文献にある記述に着目し、同様の超常的存在が古代にも記録されていたことを発見したのだ。
明確な名称はなかったが、学者たちは古代ギリシャ語の語根に基づき「ios(イオス)」という名前を与えた。それは神話的でありながらも、どこか未来を感じさせる響きを持っていた。
この「ios(イオス)」という言葉はやがて広く普及し、後にテクノロジー業界にも影響を与えた。Apple社が自社のオペレーティングシステムに「iOS」と名付けたのも、この用語への敬意が込められていると言われている。
とはいえ、各国によって「ios」の捉え方は異なっており、その理解と研究には差がある。共通しているのは、ほとんどのios能力者は自らの能力を完全にコントロールできず、時にはその存在さえも自覚していないことだ。彼らの能力は生命を脅かすものではなく、むしろ本人にとっても予測不可能な現象として現れることが多い。
現在、私はアメリカにある「Aves(アヴェス)研究所」の所長を務めている。Avesとは、現在の国際的な呼称であり、古代的な「ios」に代わる進化した概念として私たちはこの言葉を採用した。
私は華僑の末裔として、多様な文化と視点の中で育った。それゆえ、Avesという存在を恐れるのではなく、理解し、共に生きる道を探ることが人類全体の未来に繋がると信じている。
だが、最近の政治情勢はその道をより険しくしている。新たに就任したアメリカ大統領、トランプ氏は「自分ほどAvesを理解している者はいない」と発言し、「貧困層の中にAvesが多く存在する」と言い放った。根拠のないその言葉は世論を混乱させ、Avesに対する差別と誤解を助長する結果となった。
だからこそ、私は筆をとる。研究者として、そして一人の人間として。
この本では、「Aves」として生きる者たちの姿を描き、彼らが直面する苦悩や希望、そして世界との向き合い方を、私の視点から語っていきたい。
Aves──それは人類の未来の一つの可能性であり、私たちが未知とどう向き合うかを試される鏡でもある。