第2章:靈猿の里を出航

命は貴いものだが、自由はもっと高価なものだ!

石猴は反抗を決意し、運命の枷から解き放たれようとした!

数日後、石猴は猿の群れに竹の筏を編ませ、果物を積み込み、竹竿を手に取って乗り込んだ。

「大王様、本当に行かれるのですか?」

「行かないでください!」

猿たちは石猴との別れを惜しんだ。

王となった期間は短かったが、博識な石猴はすぐに猿の群れの尊敬を得ていた。

この一年で、猿王は彼らに多くのことを教え、共に花果山を遊び、水簾洞に宿り、春には百花を摘み、夏には果実を探し、とても楽しく過ごしていた。なのに、どうして突然、求仙の境地を目指すことになったのだろう。

「時は貴重だ、行かねばならない」

石猴も猿の群れとの別れを惜しんだが、その決意は変わらなかった。

天書の記載によると、孫悟空は天地が生んだ靈猿の里で、修行の旅に出る前に花果山で数百年を過ごしたという。

自分の将来の運命を知っている石猴が、数百年も待てるはずがなかった。

今の若さのうちに、早く斜月三星洞を見つけなければならない。

「みんな、行ってくる!」

石猴は猿の群れに別れを告げ、力強く竹竿を突き、筏はゆらゆらと揺れながら、まっすぐ大海へと滑り出した。

猿たちは彼の遠ざかる姿を見つめ、一様に顔を覆って泣いた。

石猴が出航してしばらくすると、前方には果てしない大海が広がり、波煙が立ち込め、東西南北の区別もつかなかった。

「老亀よ」

彼は竹竿で海面を叩いた。「前方は西北の方角か?」

「はい、大王様」

海面に一匹の亀が浮かび上がった。

「あちらが西北でございます」

亀が答えた。

石猴は書物の記載に従い、東南の風が吹く日を選んで出航したが、南贍部洲までどれくらいかかるかは分からなかった。

海上の景色はいつも同じで、数日で石猴は飽きてしまい、凪の日には筏の上で眠り、夢の中で本を読んでいた。

亀が筏を護送し、幸い事故に遭うこともなかった。

途中、一匹の海老兵が筏を見つけた。

「老亀、なぜここに?」

海老兵は長剣を持って亀に近づいてきた。「花果山に行ったはずでは?」

これは亀の知り合いだった。

「大王様を南贍部洲までお送りしているのです」

亀は海老兵に答えた。

「大王様?」

海老兵は海面から顔を出して筏を見た。「あの猿があなたの大王様なのか?」

亀は頷いた。「彼は花果山の猿、猿、馬猿、すべての猿の王です」

「猿王?」

海老兵は一瞬呆然とし、すぐに大笑いした。「老亀よ、五百年も修行したのに、頭がおかしくなったのか。龍宮に行かずに、猿の下僕になるとは」

「龍宮は私一人いなくても困らない」

亀は気にせず、逆に尋ねた。「お前は龍宮の役人なのに、なぜこうして外にいる?龍王のお叱りを受けないのか」

「ああ、言わないでくれ!龍宮の姫様が遊びに出てしまい、みんなで探しているんだ」

海老兵は急に憂いに満ちた表情になった。「龍王様は激怒されて、見つからなければ、どれだけの海老兵や蟹が首を失うか分からない」

「怠けてはいられない、姫様を探さねば。老亀、また会おう」

海老兵はそう言うと、長剣を持って泳ぎ去った。

その去り行く波紋を見つめながら、老亀は首を振った。

「大王様は決して誰かの命を奪ったりはしない」

亀は心の中で思った。

彼は元々龍宮で仕えようと思っていたが、龍宮の主たちは彼のような小妖の命など何とも思っていなかった。

しかし猿王は違った。わずか一年の統治だったが、活発で愛らしく、賞罰は明確で、人々の心服を得、花果山の多くの獣たちが彼の配下に集まった。

亀は五百年生きて、多くの大妖怪を見てきたが、猿王のように特別な存在は一人もいなかった。

猿王は生まれながらにして強大で、虎や豹を恐れず、いずれ名師を得れば、必ずや大いに輝き、その成就は龍の子孫にも劣らないだろう。

亀は未来への確信を胸に、筏を護送し続け、ついに南贍部洲に到着した。

「やっと着いた」

石猴は筏から岸に飛び降り、老亀に別れを告げると、海辺へと向かった。

筏が南贍部洲に近づいたのは夜だった。石猴は海辺に人がいないと思っていたが、夜の闇の中でも魚を捕り、貝を掘っている人々がいた。

天書には、孫悟空が上陸後、虎の真似をして人間族を驚かせ、かごや網を捨てて四散させ、逃げ遅れた者を捕まえてその服を奪って着たと記されていた。

石猴は予め遭遇する困難を計算していたので、虎の真似をする必要はなかった。

彼は猿の群れに虎皮の外套を編ませ、上陸前に虎皮の帽子もかぶり、丸くて大きな目だけを覗かせていた。

石猴が海辺の男に道を尋ねると、男は彼の服装に注目した。虎皮は普通の人が身につけられるものではない。

男は石猴を何か裕福な家の若様だと思い、少しも怠慢にせず、一つ一つ丁寧に答えた。

石猴は道を教えてもらい、立ち去ろうとしたが、遠くに多くの人間族が集まって何かを議論しているのに気づいた。

好奇心の収まらない石猴が近づいていくと、人々が珍しがって値段を尋ねる声が聞こえた。

なんと二人の漁師が浜辺で座礁した大きな魚を捕まえていたのだが、あまりにも大きすぎて、誰も軽々しく買おうとはしなかった。

石猴が群衆を掻き分けて入っていった時、ちょうど白髭の老人が言っているところだった。「この魚は大きすぎる。切り分けて売ったらどうだ?」

石猴が地面を見ると、確かに一メートルほどの大魚が網に捕らわれて動けずにいた。

「涙を流している」

石猴は大魚の目から流れる二筋の輝く涙を見た。「放してやりなさい」

「放すだって?」

二人の漁師は怒った。「そんなことできるわけないだろう。買う気がないなら、さっさと消えろ」

彼らは二つの肉斧を振り上げ、老人の提案通り魚を切り刻もうとした。

「待って...」

石猴は彼らを止め、ポケットから真珠を取り出した。「これと交換しよう」

真珠を見た二人の漁師の目は釘付けになった。

「い、いいとも!交換だ!」

漁師たちは斧を投げ捨て、狂喜して真珠を受け取った。

人間族の社会に適応するため、石猴は予め猿の群れに旅費用の真珠を集めさせていた。これらの真珠は花果山では全く珍しいものではなかった。

石猴は二人の漁師に大魚を海に戻すよう頼んだ。

大魚は海水に触れると、尾を一振りして水しぶきを上げ、少し離れたところまで泳ぐと、体を回転させ、感謝の眼差しで石猴を見つめた。

「これからは軽々しく岸に上がらないように」

石猴は手を振り、純真な瞳が月光の下で星のように輝いていた。

大魚は石猴をしばらく見つめ、彼の姿を心に刻むかのようだった。そして海中深く潜って姿を消した。

石猴は善行を為し、気分よく町へと向かった。

彼が去った後まもなく、一人の小沙彌が海辺にやって来た。

「おかしいな」

小沙彌は周りを見回した。「菩薩様が一匹の魚を救えとおっしゃったが、どこにいったのだろう?」

一陣の風が吹き、小沙彌は突然心が動いた。手のひらを広げると、砕銀がお香の灰となって、風に吹かれて消えていった。

「戻りなさい」

観音菩薩の声が小沙彌の耳に届いた。

「あの龍姫はもはや私との縁がなくなったのです」