花果山に来て十日目、鎮元大仙はある妖怪に興味を持った。
その妖怪は毎日決まった時間に十里先の湖畔に現れ、一時間ほど佇んでいた。
今日も同じように、妖怪の両足が疲れるまで、彼女は湖面から目を離さなかった。
「何度見ても、私って本当に美しいわ」
彼女は感慨深げに言った。
「賢弟……」
鎮元大仙はここまで聞いて、ついに手中の仕事を止めた。
彼は孫悟空に尋ねた。「あの妖狐は頭がおかしいのか?」
「いいえ」
地面に結界の符文を刻んでいた孫悟空は答えた。「あれは我が花果山の妖狐様で、生まれつき美を愛する者です」
「普通の美への愛ではないな」
鎮元大仙は言った。あの妖狐は一時間も動かずに湖面を見つめることができる、それは異常すぎる。自分も美を愛するが、普段鏡を見るのは十分で飽きてしまう。
「どれほど美しいのか、見てみよう!」
鎮元大仙は法術を使い、十里先の妖狐の姿をはっきりと見た。
「たいしたことはないな……」
一見すると、妖狐は確かに美しかったが、天上の女仙人程度で、鎮元大仙の目を引くほどではなかった。
しかし、よく見ると鎮元大仙は驚いた。
その妖狐は全身から、言動や仕草の一つ一つに至るまで、妖艶な気を放っていた。仙女はおろか、天上の嫦娥でさえ及ばないほどの魅力があった。
いわゆる妖艶さとは、異性を魅了する気質のことである。
どんな男でも彼女を見れば心が揺らぎ、抱きしめたくなるほどだった。
「この狐は必ず禍を招くだろう」
鎮元大仙は指で占うと、この妖狐の恐ろしさを理解した。
この妖狐の妖艶さは強すぎる。鎮元子様や孫悟空のような大仙様には効果がないが、普通の妖怪や散仙には致命的な魅力となり、凡人にはなおさらだ。
彼女が花果山を離れれば、必ず争奪の的となるだろう。
鎮元大仙はさらに深く占った。妖狐は絶世の妖艶さを持つが、自身の力では身を守れず、死期が近いことが分かった。
しかし、妖狐の身に死の兆しは見えなかった。
「これは不思議だ」
鎮元大仙は別の指で占い直し、やっと理解した。
「なるほど、賢弟が彼女を守っているのか」
鎮元大仙は孫悟空に微笑んで言った。「君は彼女をここに縛り付けながら、同時に守っているのだな」
孫悟空は頷いた。あの妖狐は本性が悪くないので、守るべきだと。
「しかし、それでも……」
鎮元大仙は注意を促した。「花果山も完全に安全な場所ではない。あの妖狐の妖艶さはいずれ禍を招くだろう。早めに去らせた方がいい」
孫悟空は首を振った。「彼女が去れば、花果山の妖王様の三分の一が離れてしまう」
これこそがこの妖狐の恐ろしさだった。花果山の妖王様たちはほとんど彼女の周りを取り巻き、様々な方法で彼女の機嫌を取ろうとしていた。
孫悟空は妖王様たちの離反を止めないが、一人の女妖に彼らを連れ去られる理由もなかった。
そして妖狐が自ら去らない限り、孫悟空も彼女を追い出すつもりはなかった。
鎮元大仙は眉をひそめた。「では何か方法を考えて、彼女が面倒を起こさないようにすべきだ」
孫悟空は笑って答えた。「すでにやっています」
彼は符文を刻み終え、立ち上がって指を鳴らすと、十里先の妖狐は思わず空を飛んでこちらに来た。
鎮元大仙は好奇心を持って、地面に落ちて尻を押さえながら叫ぶ妖狐を見つめた。
「大王様、こんな手段で私を扱わないでください」
妖狐は立ち上がって孫悟空に尋ねた。
近くで見ると、彼女の妖艶さはより一層驚くべきものだった。特に狐耳と狐尾を持つ化身の境地は、男たちを焦らせるほどだった。
鎮元大仙の心が動いた。この妖狐は怒りの表情を見せているが、妖気は清らかで、明らかに悪事を働いたことがない。
彼は思わず好感を抱いた。
「お前の名は何という?」
鎮元大仙は尋ねた。
孫悟空は首を振った。「彼女には名前がない」
花果山の妖怪は外の世界とは違い、ほとんどが名前を持っていなかった。
「私には名前があります」
妖狐は反論した。
孫悟空は少し驚いた。「自分で付けたのか?」
「もちろんです」
妖狐は鎮元大仙に向かって言った。「私の名は妲己です」
孫悟空はため息をついた。「どこでその名前を聞いた?」
妖狐は得意げに彼を見た。「もちろん小妖たちが教えてくれたのよ!」
「大王様はなんて意地悪なの、どうして『封神演義』を私に知らせたくないの?」
妖狐は尋ねた。
この妖狐は物語を聞くのが好きで、孫悟空は蘇妲己の話を知られたくなかったため、小妖たちに『封神演義』を彼女に話すことを禁じていた。
しかし、妖狐が自分の魅力で情報を得ることまでは予想していなかった。
「そういえば、大王様」
妖狐は孫悟空に言った。「私が森から出ないという条件で、毎年物語を聞かせてくれるはずでしょう。今年のはまだですよ!」
孫悟空は頷いた。「お前を呼んだのは、そのためだ」
彼は毫毛を一本抜き、猿の精に変えて妖狐の側に歩み寄った。
妖狐は猿の精を連れて楽しそうに森の中へ消えていった。
「何を話して聞かせるつもりだ?」
鎮元大仙は猿の精と妖狐の姿が森に消えていくのを見つめながら尋ねた。
「民間の物語だ」
孫悟空は答えた。
猿の精が妖狐に語る物語は、すべて古代の怪談や、妖狐の好みに合わせた……心の癒しの話だった。
時間を計算すると、その癒しの話もそろそろ効果を発揮する頃だった。
十日後、猿の精は孫悟空の元に戻ってきた。
「成功です。彼女には才能がありました」
孫悟空は毫毛を戻し、突然笑みを浮かべた。「私は彼女を見誤っていなかった」
鎮元大仙は心の中で疑問を抱いた。孫悟空が何をしたのか分からなかった。
二人は結界の研究を続け、ある日二人の妖王様が森を通り過ぎる時、鎮元大仙は彼らの会話から孫悟空の成果を知ることになった。
「昨日、妖狐様に花を贈ろうとしたら、黒い服を着て、右手を押さえながら、雨の中を一人で歩いているのを見かけた。とても苦しそうに叫んでいたよ」
「ああ、君も見たのか?」
二人の妖王様は驚いた様子だった。「何て叫んでいたか聞こえた?」
「確か麒麟の腕とか……」
「私も聞き間違えたと思った」
二人の妖王様は立ち止まり、困惑した表情を浮かべた。
「なぜか、あの光景を見たら、花を贈る気が失せてしまった」
「私もだ……」
遠くにいた鎮元大仙は耳を澄まし、二人の妖王様の会話を聞き終えると、思わずその場面を想像した。
あの妖狐の妖艶さは消えたようだった。
「賢弟は一体どんな方法を使ったのだ?」
鎮元大仙は驚き喜びながら、これはどんな修練法なのか、どうやって人の妖艶さを消すことができたのかと。
彼は急いで孫悟空を引き止めて尋ねた。
孫悟空は仕方なく、一言だけ答えた。「私は彼女の美に対する認識を変えただけです」
彼は妖狐に後世の一面的な美意識を植え付けたのだった。
いわゆる気質というものは、非常に変えやすい。
妖艶さも、結局は一つの気質に過ぎない。
服装を少し変に変え、行動や仕草を変えれば、どんな生まれつきの妖艶さも消えてしまうものだ。
ただし、この方法は自分を大切にし、並外れた美意識を持つあの妖狐にしか通用しないだろう。