第40章:牛魔王の戦い

二日後、孫悟空は広恵から仏法の教えを聞いていた。

「賢弟よ!」

鎮元大仙が水簾洞に入ってきて、慌ただしく彼を引っ張って行こうとした。

孫悟空は驚いて「大仙様、どうしたのですか?」

「急いで北倶盧洲へ連れて行ってくれ。」

鎮元大仙は言った。「お前には筋斗雲があるから、私よりちょっとだけ速い。」

孫悟空は眉をひそめた。「北倶盧洲に何をしに?」

「真武大帝様が数万の天の兵士を率いて妖の国を包囲している。」鎮元大仙は答えた。「これが最後の戦いになるだろう。」

「それがどうしたの?」

「妖怪たちは必ず四方八方に逃げ散るはずだ。」鎮元大仙は言った。「その隙に鳳凰を捕まえよう。私と真武大帝様の関係なら、見なかったことにしてくれるはずだ。」

孫悟空はしばらく呆然としていた。「鳳凰を捕まえて何をするんですか?」

「馬車を引かせるのさ。」

鎮元大仙は満足げに言った。「萬歳狐王様が私のために馬車を作ってくれることになったが、彼は法力が弱くて鳳凰を捕まえられないんだ。」

孫悟空は仕方なく、鎮元大仙の手を引いて、一つの筋斗で北倶盧洲へと向かった。

鎮元大仙の耳元で風が激しく吹き荒れていたが、幸い彼は仙體の持ち主だったので、そうでなければこの風に引き裂かれていただろう。

二人が北倶盧洲に着くと、戦場に近づく前から、遠くの空が真っ黒に覆われているのが見えた。

孫悟空は筋斗雲を止めた。

「どうしたんだ?」

鎮元大仙が我に返って前を見ると、思わず冷や汗が出た。

その黒い雲の正体は他でもない、無数の妖怪たちだった。数え切れないほどの妖怪が陽の光を遮り、瞬く間に二人の前まで押し寄せてきた。

妖衆に飲み込まれそうになった時、鎮元大仙が長い袖を振るうと、気流が黒雲の中に裂け目を作り、無数の妖怪が悲鳴を上げながら地面へと落ちていった。

他の妖怪たちはこの光景を見て、魂も飛び出さんばかりに驚き、素早く両側へと逃げ散った。

「私たちは遅すぎた。」

孫悟空が言った。

これほど大量の妖怪が逃げ出すということは、間違いなく妖の国は敗北したのだろう。

「早く出発しろと言ったのに、お前が遅かったんだ。」

鎮元大仙が文句を言おうとした時、突然目の前が明るくなり、妖怪の群れの中に西へ向かって飛んでいく鳳凰を見つけた。

「あれを捕まえに行く。」

鎮元大仙は孫悟空を置き去りにして、鳳凰を追いかけていった。

いくつかの妖怪は恐れられる存在が消えたのを見て、再び孫悟空の方向に押し寄せてきた。

孫悟空が手を出そうとした時、突然驚いた声を上げ、白い光がこちらに飛んでくるのを見た。

「牛魔王!」

孫悟空が叫ぶと、白い光はすぐに止まった。

姿を現したのは、果たして牛魔王だった。

「お前か!」

この時の牛魔王は全身傷だらけだった。「なぜここにいる?」

「ちょっと様子を見に来ただけさ。」

孫悟空は眉をしかめた。「妖の国の大王様なのに、なぜここまで逃げてきたんだ?」

「余計な詮索はするな。」

牛魔王は顔を青ざめさせた。「この戦いは我々の準備が足りなかった。次こそは、必ず真武大帝様を私の手で殺してやる!」

孫悟空は牛魔王の背後を見た。牛妖の国以外の妖怪たちは、恐れて避けていった。

「他の五人の妖聖はどうした?」

孫悟空は尋ねた。「まさか、まだ戦場にいるんじゃないだろうな?」

「何を言い出すんだ!」

一匹の牛妖が飛んできて、孫悟空に怒鳴りつけた。「我らの大王様は義理堅い方だ。どうして自分の兄弟を戦場に置き去りにするものか!」

孫悟空は牛魔王を見たが、その目の底に苦痛の色を見た。

そこで孫悟空は呪文を唱え、千里先を見通すと、戦場の光景が目に映った。

そこでは波が天を衝き、巨石が壁となり、二人の妖聖が結界を作って天の兵士たちを包み込み、妖衆を追撃できないようにしていた。

「なるほど、そういうことか。」

孫悟空は視線を戻した。「蛟魔王様と獅駝王様は義理堅いな。」

六人の大聖のうち二人が戦場に残っていた。それぞれ復海大聖と移山大聖だ。

彼らは神通力が広大で、波と巨壁で天の兵士たちを引き止め、他の妖聖たちに逃げる機会を与えていた――牛魔王の表情に苦痛が浮かんでいたのも無理はない。

「猿王よ、お前も私たちと同じ妖聖だ。」

牛魔王は突然思いついたように、孫悟空を巻き込もうとした。「今、私の二人の賢弟が危機に陥っている。一つ手を貸してくれないか!」

「手を貸せだと?」

孫悟空は頷いた。「それは簡単なことだ。」

彼は口を開け、一枚の葉子を取り出し、呪術を唱えてそれを大きくした。

牛魔王が反応する間もなく、孫悟空は芭蕉扇を一振りすると、牛魔王は消えてしまった。

そして戦場では、蛟魔王様と獅駝王様が必死に持ちこたえ、もう限界というところで、牛魔王が空から降ってきて、真武大帝様に直撃した。

「大兄!!!」

蛟魔王様と獅駝王様は感動で涙を流した。「なぜ戻ってきたのですか!」

戻りたくて戻ったんじゃない、あの猿めが俺を陥れたんだ!

牛魔王は心の中で血を吐いた。

まだ状況が飲み込めないうちに、真武大帝様の一撃を受けて吹き飛ばされ、骨が砕けそうになった。

牛魔王は地面に大きな穴を開けて落ちた。

「大兄!」

蛟魔王様と獅駝王様は彼の側に駆けつけ、涙を流しながら言った。「こんなに義理堅い方だとは思いませんでした!」

牛魔王は二言三言呟いたが、両足はすでに震えていた。

やっとの思いで戦場から逃げ出したのに、あっという間に戻されてしまうとは思いもよらなかった。

あの猿の手にあったものは一体何なのか、どうしてこんなに強力なのか。

仕方がない、強がるしかない。

牛魔王は涙を流す二人の兄弟を見て、歯を食いしばり、凛として言った。「二人とも心配するな。私が真武大帝様を引き止めよう!」

「大兄!!」

蛟魔王様と獅駝王様は感動で胸がいっぱいになった。

大兄は彼らがもう持ちこたえられないことを知って、わざわざ助けに来てくれたのだ。

こんな素晴らしい大兄を、どこで見つけられるだろうか!

蛟魔王様は涙を浮かべながら、獅駝王様を掴んで遠くへ飛んでいった。

「二兄!」獅駝王様は大いに驚いた。「何をしているんです?早く私を放してください。どうして大兄を一人にしておけますか!」

「四弟よ、なぜそんなに鈍いのだ!」

蛟魔王様は獅駝王様に叫んだ。「大兄が一人で真武大帝様を引き止めると言ったのだ。我々は法力が尽きかけている。ここに残れば大兄の足手まといになるだけだ。」

彼の顔は涙でいっぱいだった。「大兄は覚悟を決めたのだ。自分を犠牲にする覚悟をな!」

獅駝王様は心が震え、牛魔王の深い思いやりを悟った。

「大兄!」

彼は空から大声で叫んだ。「必ず生きて帰ってきてください!」

二人の妖聖は叫びながら逃げ、瞬く間に姿を消した。

牛魔王はこの光景を見て、心中穏やかではなかった。「二人の賢弟よ、私は逃げろとは言っていないのに。」

先ほどの猿も同じように誤解していたが、もしかして自分の話し方に問題があるのだろうか?

真武大帝様を引き止めると言っただけなのに、ここにはまだ数万の天の兵士がいるというのに。

「ふん。」

背後で冷たい声が響いた。

牛魔王の体中から汗が噴き出した。

振り返ると、真武大帝様はすでに天の兵士たちと共に彼を包囲していた。

「ゴクリ……」

牛魔王は唾を飲み込んだ。

あの忌々しい猿王め、全て奴が悪いのだ。

きっとこの展開を計算して、わざと彼を死地に追いやったのだ。

牛魔王は心の中で誓った。もしも今回運良く死なずに済んだら、必ずあの猿を探し出して、八つ裂きにしてやる!