孫悟空が鎮元大仙様と話をしているところに、外から誰かが彼の名を呼ぶ声が聞こえた。
外に出てみると、石獅が天に向かって飛び上がり、二郎真君様に向かって突進していた。
二郎真君様は三尖両刃神鋒を掲げ、石獅を真っ二つにしようとした。
「待て」
孫悟空は手を伸ばして石獅を掴み戻し、「何があった?」と尋ねた。
「大王様、この者があなたを懲らしめると言っていました」
石獅は怒りの声で答えた。
孫悟空は二郎真君様を見つめた。その体から仙力が漲っているのを見て、石獅が嘘を言っているわけではないと分かった。
二郎真君様は孫悟空を見るや否や、言葉もなく神鋒を振りかざして襲いかかってきた。
この直接的な方法こそが問題解決の最善策だった。
孫悟空は身を翻して避けると、地面には大きな穴が開いた。
「ここで騒ぐわけにはいかない」
孫悟空は理由が分からなかったが、二郎真君様の神通力は広大で、ここで戦えば雲霄城が崩壊してしまうに違いなかった。
彼は思案を巡らせ、雀に姿を変えて遠くへ飛び去った。
「見事な変化の術だ!だが私もできる」
二郎真君様の目に神光が閃き、神鋒を収めると姿を変え、鷹となって翼を広げ、雀を追いかけた。
追いつきそうになった時、孫悟空は素早く白鷺に姿を変え、空へと舞い上がった。
二郎真君様はそれを見て、面白く感じた。
羽を震わせ、姿を変えて白鶴となり、雲の中へ急いで飛び込み、白鷺の姿を探した。
「こいつの動きは天書に書かれている通りだ」
孫悟空もこの光景を見て、遊び心が芽生えた。
これまで誰とも変化の術を競い合ったことがなく、もう少し楽しみたいと思った。
白鷺は花果山まで飛び、渓流を見つけると魚に姿を変えて水中に潜った。
二郎真君様は空で長い間旋回し、孫悟空の姿が見えなかった。
「あの猿王はきっと水の中に隠れ、魚や蝦に姿を変えたに違いない」
二郎真君様はそう考え、魚鷹に姿を変えて渓流に沿って低く飛びながら探した。
しばらく探していた時、自分の判断が間違っていたのではないかと疑い始めた矢先、岸辺の草むらから水蛇が突然飛び出し、毒牙を向けて襲いかかってきた。
二郎真君様は慌てて飛び上がり、冷や汗を流した。
水蛇は水に落ち、草むらに潜り込んで姿を消した。
二郎真君様は孫悟空だと気付き、激怒して灰色の鶴に姿を変え、草むらに入り、長い嘴を伸ばして水蛇を捕まえようとした。
二人はこうして追いかけっこを始めた。
南天門では、玉皇大帝様と觀音菩薩様が多くの仙人たちと共に地上の戦いを見守っていた。
二郎真君様と孫悟空が次々と姿を変える様子を見て、仙人たちの間でどよめきが起こった。
「二郎真君様は確かに名不虚伝だ。その変化の多様さは誰にも及ばない」
「しかし、あの孫悟空も二郎真君様に引けを取らないぞ!」
「馬鹿を言え、やはり二郎真君様の方が強い!」
托塔李天王様は照妖鏡で地上を照らしながら言った。「よく見てみろ。あの孫悟空は明らかに真君様に追い詰められているではないか」
玉皇大帝様は頷き、密かに喜んだ。
孫悟空には確かに実力があったが、彼は逃げ、二郎真君様は追う。勝敗は一目瞭然だった。
玉皇大帝様はしばらく見ていたが、何か違和感を覚えた。
「菩薩様、彼らはまるで戯れているように見えるのだが」
彼は尋ねた。
「私もそう感じております」
菩薩様は心の中でそう思いながらも口には出さず、仏経を唱えて言った。「二郎真君様を促してみましょう」
彼女は楊柳の枝を手に持ち、下に向かって軽く振ると、すぐに微風が下へと降りていった。
微風は花果山に降り、霊網に触れた。木の上で松鼠に姿を変えていた孫悟空は心が動き、上を見上げると、すべてを理解した。
「なるほど、そういうことか」
一方、梟に姿を変えていた二郎真君様は密林で孫悟空を探していたが、木々の梢を吹き抜ける微風を感じ、天宮が苛立っていることを悟った。
「私の好きにさせてくれ!お前たちに何の関係がある!?」
二郎真君様は内心で怒った。
戦いは数え切れないほどしてきたが、これほど面白い戦いは初めてだった。
あの孫悟空は千変万化し、自分と互角の実力を持っていた。二人が楽しんでいるというのに、誰かが水を差すとは。
二郎真君様は催促を無視し、孫悟空を探し続けた。
不注意で木の穴で眠っていた母梟を起こしてしまった。
母梟は不機嫌そうに目を開けたが、二郎真君様を見るなり目を丸くした。
「ねぇ、あなた配偶者はいるの?」
母梟が尋ねた。実は小妖の一匹だった。
二郎真君様が返事をする前に、隣の木から笑い声が聞こえてきた。
「あそこだ!」
二郎真君様は飛んでいった。
孫悟空は数本の木を飛び越え、豹に姿を変えて森の中を疾走し始めた。
二郎真君様は暫く飛んでいたが、速度が追いつかず、今度は虎に姿を変え、咆哮しながら豹を追いかけた。
「追いつけるものか」
孫悟空は速度を上げ、森を出て湖の方へ走っていった。
「どこへでも行けるのに、なぜ森を出る!」
二郎真君様は目を輝かせ、湖の方へ走っていった。
森を出ようとした瞬間、突然光の壁が現れ、二郎真君様は避けきれずに壁に激突し、吹き飛ばされて地面を何度も転がった。
南天門の仙人たちは驚愕した。
「これは一体どういうことだ?」玉皇大帝様が尋ねた。「あの壁は何なのだ?」
「陛下にご報告申し上げます。あれは符文結界でございます」
千里眼は急いで答えた。「あの湖は花果山の狐妖が水浴びをする場所で、覗き見を防ぐため、妖怪たちが彼女のために設置した符文結界なのです」
それは恐らく花果山で最も強力な結界で、千里眼でさえ中の様子を見ることができなかった。
玉皇大帝様は激怒した。「二郎真君様がたかが妖怪の結界に阻まれるとは何事か?」
「それは...」
千里眼は返答に窮した。彼も結界がこれほど強力だとは予想していなかった。
「陛下、二郎真君様は一時の不注意でございます。すぐに結界を打ち破れるはずです」
觀音菩薩様が玉皇大帝様に申し上げた。
玉皇大帝様の怒りは次第に収まった。確かに二郎真君様の不注意だったことは分かっていた。
しかし、どんなに不注意とはいえ、得道の仙人の体を持つ者が妖怪たちの作った結界に阻まれるとは、実に驚くべきことだった。
玉皇大帝様が激怒した本当の理由は、妖怪たちがそのような結界を作れることが信じられなかったからだった。
「この花果山は、確かにこれ以上の発展を許すわけにはいかない」
玉皇大帝様はそう考えた。
一方、地上では壁に吹き飛ばされた二郎真君様が立ち上がり、怒りで顔が真っ白になっていた。
たかが一枚の壁に阻まれるとは、他の仙人たちに笑い者にされるに違いない。
二郎真君様は本来の姿に戻り、三尖両刃神鋒を手に取ると、力強く一振りして符文結界を打ち砕いた。
湖の方を見ると、豹が笑い転げていた。
「この!!」
二郎真君様は顔を赤らめ、屈辱に耐えられず、懐から仙器の弾弓を取り出し、一気に引き絞って孫悟空に向かって放った。
孫悟空は弾弓に打たれて湖に落ちた。
南天門では歓声が上がった。
「二郎真君様の弾弓は並のものではない」
托塔李天王様は喜んで言った。「これで、妖猿は死なずとも重傷は免れまい!」