第588章 騎士とあなた
夜、赤水市の城の大広間は明かりで輝いていた。従者がワイングラスを持って人々の間を行き来し、楽師が弦を奏で、静かに歌を歌っていた。美味しい料理が次々とテーブルに運ばれ、背の高いガラスのグラスには深紅のワインが満たされていた。
貴族の男女たちは三々五々集まって、グラスを手に会話を楽しんでいた。特にエディスは衆目の的となり、デルタ伯爵と共に貴族たちのグループ間を行き来しながら、この全てを楽しんでいるように見えた。
しかしブライアンは、自分がこの場に全く馴染めないと感じていた。
下着のシャツの襟は首を締め付け、体にぴったりとした黒いジャケットは腕も伸ばせないほどで、つま先の尖った踵の高い靴に至っては言うまでもなかった。貴族たちがこんな不自由な靴を履いて、滑らかなフロアの上を颯爽と歩き回れることが理解できなかった。
ブライアンは思わずヴァンナを羨ましく思った。第一軍キャンプの保持者として、少なくとも彼はこのような苦労を味わう必要がなかったのだから。
しかし、エディス嬢が言った「私たちはローラン陛下の顔」という言葉を思い出すと、ブライアンは思わず背筋をさらに伸ばした。
突然、誰かが彼の肩を叩いた。「随分と居心地が悪そうだな。こういった宴会は初めてかい？」
振り返ると、そこにはヒルテ準男爵がいた。彼は肩幅の広い礼服を着て、首には白いスカーフを巻いており、普段とは全く異なる雰囲気を醸し出していた。
「リラックスしなさい。そんなに緊張する必要はないよ。」
「私は緊張なんかしていません——」
「それは悪いことではない」準男爵は手を振った。「誰にでも不得意なことはある。大したことではないよ。」
ブライアンは少し黙った後、「アイアンアックス様はどこですか？」と尋ねた。
「護花使者を演じているところだよ」ヒルテは大広間の反対側を指差した。「イフィとシルヴィー嬢の人気は、エディス嬢に負けないくらいだからね。」
ブライアンは彼が指す方向を見た。二人とも急遽エディスが用意した礼服を着ており、表情も硬かったが、容姿だけを見れば北地の真珠よりも数段美しかった。「あの人たちは彼女たちが魔女だということを知らないだけです。それに、アイアンアックス様は魔女さんたちを守っているわけではありません。」
「ほう」準男爵は髭を揺らした。「そうかい？」
「正確に言えば、彼は貴族たちを守っているんです」ブライアンは頷いた。「もしイフィ嬢が怒り出したら、周りの人々が大変なことになりますから。」
二人は目を合わせ、思わず笑みを漏らした。
「ほら、今のあなたの表情の方が自然だよ。」
「私は……」ブライアンは少し驚いた後、気付いて「ありがとうございます」と言った。
「はは、気にするな」老人は従者を呼び、ワインを一杯取り、彼の方を見た。「一杯どうかな？」
「いいえ……陛下は、任務中の軍人は絶対に飲酒してはいけないと。」
「休憩中でもダメなのかい？」
「規則です。」
「そうか」彼は一人で一口飲んだ。「それは残念だ。」
「あの……」ブライアンは少し躊躇した後、「エディス嬢の言ったことは本当なのでしょうか？」
「例えば？」
「騎士は外出時に陛下を代表しているので、礼儀として、このような招待を簡単に断るべきではないということです。」
「うーん……まあ、そんなところだ」準男爵は頷いた。
ブライアンは急に落ち込んだ様子を見せた。「私は騎士には向いていないのかもしれません。このような場で彼女のように自然に振る舞うことができません。」
「それは当然だよ」準男爵は手を広げた。「生まれながらにしてこういうことが得意な人もいる。確かに、宴会で優れた振る舞いを見せる騎士は領主に誉れと賞賛をもたらし、外交上の利点にもなる。でもそれが騎士の全てではない。実は、私の息子も貴族間の社交が非常に苦手なんだ。」
「払暁の光のことですか？」
「そうだ。他の貴族とほとんど付き合わないし、領主からの招待もよく欠席する。でも、彼が優れた騎士であることは誰も否定できない。」
「フィリンさんにそんな一面があったとは知りませんでした」ブライアンは驚いて言った。
「知らないことはまだまだたくさんあるよ」ヒルテ準男爵は笑って言った。「彼は石のように頑固な性格でね、劇場の庶民の女性を妻に迎えたときは、当時の私は怒り心頭で、彼との付き合いまで絶ってしまった。でも後になって自分が間違っていたことに気付いたんだ。エリン夫人は妻として申し分のない人物だった。爵位も家柄もないことを除けば、他の貴族の令嬢に劣るところは何一つなかった。あの時期、二人がよく耐え抜いてくれたものだ。」彼は話題を変えて「辺境町の食糧を守るため、反乱者と死闘を繰り広げたと聞いたが？」
「えっと……実際に彼らを止めたのはナイチンゲール様です」ブライアンは少し照れくさそうに答えた。「彼女がいなければ、私はとっくに地下室で死んでいたでしょう。」
「でも少なくとも立ち向かったじゃないか。それだけでも大多数の貴族より勇敢だよ。騎士の名を持ちながら、敵を見れば逃げ出す貴族は少なくない。陛下があなたを騎士に任命したのは、きっとあなたの社交能力を見込んだわけではないはずだ。あなたの最も得意とすることを貫けば、立派な騎士として十分だよ。」
「わかりました」ブライアンは思わず感動した。「このようなお話をしていただき、ありがとうございます。」
「気にするな。私たち二人の雑談として受け止めてくれ」準男爵は髭に手をやりながら言った。「あなたを見ていると、つい息子のフィリンを思い出してしまって、話が長くなってしまったよ。」
しばらくして、ブライアンは小声で尋ねた。「では、エディス嬢の言ったもう一つの言葉は？貴族間の社交は退屈で面白みがないとか……」
「彼女のことをずいぶん気にかけているようだね」老人は興味深そうに彼を見つめた。「もしかして……」
「いいえ、違います！単なる好奇心です」ブライアンは慌てて手を振った。「彼女は先ほどまで嫌そうな様子でしたが、今は楽しんでいるように見えます。」
「そうだねえ」準男爵は舌打ちをした。「どう言えばいいかな。好きではなくても、全てのことを適切に処理できる人もいる。エディス嬢はそういった人々の中でも特に優れた一人なんだろう。」
「好きではなくても上手くできる？」
「それは珍しいことではない」ヒルテ準男爵は肩をすくめた。「彼らは特質に恵まれていて、得意なことは数え切れないほどある。でもそれは全てが好きだということではない。まして彼女は公爵の娘だ。こういった社交は彼女にとってはもう本能のようなものになっているはずだよ。」
「陛下は彼女のような人を必要としているに違いありません」ブライアンはため息をついた。
「かもしれないね」老人は曖昧に答えた。「でもそれは陛下が他の人を必要としていないということではない。先ほど言ったように、誰にでも得意分野がある。『一点に専念して』極めることは、『何でもできる』ことに決して劣らない。なぜなら、人の精力には限りがあるからだ。これが彼があなたたちに注目している理由でもある……」彼は一瞬言葉を切った。「無冬城のチェンジを見てから、私は彼が正しかったと思うようになった。」