第377章 握手とサイン会

「どう感じる？」

「秀次、痛くない？」

鈴木希と雪里は心配そうな表情を浮かべ、特に雪里は少し真剣な表情をしていた。北原秀次の肘、肩、手首、中指の関節などには消炎スプレーが吹きかけられ、包帯が巻かれ、冷却シートが貼られていた。処置は万全だった。私立ダイフク野球部の名目上の監督コーチが実際には学校医だったからだ——北原秀次は激しい投球を行い、一人で試合を投げ切ったため、右腕に軽い怪我を負っていた。

彼はそれほど気にしておらず、家で自分で処置するつもりだったが、鈴木希は非常に心配し、躊躇なく鈴木花子という学校医に包帯を巻くよう命じた——実際には靭帯の挫傷に過ぎず、通常は関節の可動範囲を超える動作をしたことで、関節部分が軽度に腫れる程度のもので、重労働やスポーツ活動では非常によくあることだった。

北原秀次は自分の腕を見て、それから雪里と鈴木を見て、余計なことをしていると感じ、家で薬を塗るだけで十分だと思い、無念そうに言った：「本当に大したことないよ。自分の体は自分が一番分かってる」

【呼吸力】というスキルには少し欠点があった。一つはCDが長すぎること、そのため試合時間が長くなりすぎること。もう一つは力が急激に増加することで関節に大きな負担がかかることだった。

前者は簡単で、投球後に時間を稼げばよかった。ボールを拭いたり、パウダーパックを投げたり、靴紐を結び直したり、お尻が痒くて掻いたり、腕が不快で揉んだり、マウンドを踏んだり、チームメイトの位置を指示したり、コーチと相談したり——これらを適当に組み合わせれば、2分以上は簡単に稼げる。それから打者を観察し、雪里とサインを交換すれば、だいたい時間は過ぎていく。

しかし今回は聖なる光の打線を完全に抑え込み、百パーセント必勝を確実にするためにそうしたのだ。今後の試合では、激しい投球の後で適度に時間を稼ぎ、適当にボール球を投げ、それからボールを要求し、もう一度時間を稼げば、CDの時間を稼ぐのはもっと楽になるだろう。

野球はもともと順番制のスポーツで、リズムは明確だがゆっくりしている。CDが長くても問題ない。ただ、関節への負担が大きいのは良くないが、勝利のためなら受け入れられる。

試合に負ければ、雪里はより激しい攻撃を受けることになる。もし軽い怪我で彼女のプレッシャーを軽減できるなら、そうしない理由はない。これは腕が永久に使えなくなるということではない——得るものがあれば失うものもある、それは理にかなっている。

北原秀次はこの程度の怪我や病気を気にしていなかったが、鈴木希はそうは考えなかった。

人体は実際とても精密な機械で、関節の軽い挫傷は一見大したことないように見えても、日々積み重なれば、将来機能障害を起こす可能性もないわけではない——多くのスポーツ選手が関節の小さな怪我や病気が原因で引退している。前例は明らかだった。

彼女は北原秀次が彼女と一緒に夏の間野球をして、その後一生の怪我を負うことになるのは望んでいなかった。しかし、彼女は北原秀次がなぜそうするのかも少しは理解できた……少なくとも彼女のためではないことは確かだった。

彼女は北原秀次の腕と、それが価値あることだという表情を見て、そして傍らで慎重に包帯を観察している雪里を見た。雪里は彼女の親友だったが、この時彼女は二升の古い酢を飲んだような気分だった。

あなたが純粋に私のために怪我をしてくれたら、どんなにいいだろう！

彼女は一時的に暗く落ち込んで、男は無情で女は情があるというのはあまりにも心が痛むことだと思った。そして北原秀次にこの数日は右手を使わないように注意を促してから、席に戻って学校理事会と学生会に良い知らせを報告し始め、ついでに一軍メンバーとクラブのために特典を要求した——学校の名誉を高めたのだから、学校も少しは出血すべきだ、もらえるものはもらっておこう。

北原秀次は一番目のガールフレンドの安全問題を心配し始めた。大型バスにはまだ福沢家の席がなく、冬美は陽子や弟妹たちと一緒に公共バスで名古屋市に帰らなければならなかったが、帰りは式島律が一緒だった。

事故が起きることはありえない、福沢家の戦闘力は信頼できるし、式島律の性格も比較的落ち着いていて穏やかだが、それでも確認しておく必要があった。

雪里は素直にメールを打ち始めた。この時、大型バスの中は歓声に包まれていた。愛知県の野球名門、聖なる光を一気に打ち破り、これはもう士気が上がったというレベルではなく、全員が甲子園への希望を見出していた。

あれは甲子園だ。高校時代に一度出場すれば、たとえ優勝できなくても、将来自慢の種になる。

「あの...北原先輩、ちょっとよろしいでしょうか？」

北原秀次は雪里にメールを打つように指示していたところだったが、声がしたので振り向くと、見知らぬ一年生の少女がいた。バスの中なので当然チアリーダーのメンバーだった。声がかすれているのは、応援で疲れたためだろう。

これも試合の勝利に貢献した一人だ。北原秀次は笑うことはできなかったが、できるだけ穏やかな態度で尋ねた：「何かご用でしょうか？」

「先輩が怪我をされているので、お邪魔するべきではないのですが、でも...私は...」この少女は北原秀次を直視できず、しばらく言葉を詰まらせた後、突然決心したように、小さなノートを持って前に向かって深々と頭を下げながら差し出した。「先輩のサインをいただけないでしょうか？お願いします！」

彼女は先輩に叱られるのを恐れていたが、彼女は本当に野球が好きだった——見るのが好きなだけで、自分では野球をしない——彼女は今日の北原秀次の試合を見て心を奪われ、彼が次の江川卓ではないかと思い、彼のサインが欲しかった。特にこの記念すべき初勝利の時のサインを。

このチャンスは今しかない。今を逃せば、後で記念の意味が一段階下がってしまう。だから叱られる可能性が高くても、彼女は後ろから前の席まで這うように進み、勇気を振り絞ってサインをお願いした。