宋書航は無名観を離れた後、心臓の鼓動が徐々に落ち着いてきた。
この時、無名観の外では、参拝に来る参拝客が絶え間なく続いていた。数日前まで、ここに参拝に来る人々は主におばさんやお年寄りの女性だったが、今では若い男女が多く増えていた。
宋書航が無名観を出る時、四人の若い男女が一緒に観の中に入っていった。
その中の一人の少女が、声を潜めて仲間に尋ねた。「林悦、この観の中の無名仙君像は本当にそんなにすごいの?」
彼女の隣にいた少し幼い顔立ちの女の子が、小声で答えた。「私も気になるの。あなた、私のクラスの余大少を知ってるでしょう?家はお金持ちで、彼女を次々と変えていたのよ。でも一昨日、彼が好奇心から無名観に来てこの無名仙君像を見た後、まるで人が変わったみたい。彼女とも別れて、毎日この無名道観に通おうとするの。」
隣の男子学生が頷きながら同意した。「僕も余大少の件が気になって来たんだ。本当に気になるよ、人を魅了してしまう無名仙君像って一体どんなものなんだろう?」
三人の若者はまだ学生で、彼らが参拝に来た理由は好奇心からだった。彼らのように仙君像の姿が気になって参拝に来る人々は少なくなかった。だから最近、無名観の参拝客が増えているのも納得できた。
三人の学生の隣には、二十七、八歳の若い男性がいた。
三人の学生とは違い、彼は'無名観の無名仙君'が霊験あらたかだと聞いて、遠路はるばるここまでやって来たのだった。
若い男性は観の中に入ると、線香を上げ、ろうそくを灯し、小声で祈った。「仙君様、どうか私の妹の病気が治りますように。あの奇妙な虚弱病症に苦しむことがないように。仙君様、私の願いをお聞き届けください。もし妹の病気が治ったなら、必ず仙君様のために大きな道観を建てて願を返させていただきます!」
祈り終えた後、若い男性は顔を上げて仙君の彫像を見上げた。
ただ一目見ただけで、彼は自分の心拍が加速し、呼吸が荒くなるのを感じた——目の前のこの仙君彫像は、あまりにも完璧すぎて、目を離すことができなかった!
たとえ自分の全てを捧げてそれと交換しても、後悔はないだろう!
この考えが彼の脳裏から離れなかった。
若い男性は夢見心地になり、最後には自分がどうやってこの無名観を出たのかも分からなくなっていた。
夢遊病のように自分の車に戻った。