第262章 この世にドラゴンなし

「ヤハタ弓?」

山姥は驚きの声を上げ、すぐさま狂喜した。

彼は思いもよらなかった。鴉天狗の天城坊がこの八幡神社で数百年も祀られてきた祝器を携えているとは。

このように長い時を経て供養と祭祀を受けた後、かつての龍神の聖痕から変化したこの国境の遺物には、紛れもない神性が与えられ、聖痕に対する破壊力は恐ろしいほどだった。

「憎らしい、この世にはもう龍がいないとはな」

鴉天狗は手にしたヤハタ弓を掲げ、思わず感慨深げに呟いた。その声色には深い諦めと怒りが滲んでいた。

そう、この世界にはもう龍はいない……

百年以上前、東夏系列が「絶地天通」を完成させて以来、世界中の東夏の龍種に関連するあらゆる神性は完全に断ち切られた。

しかし東夏以外で、現状、国境、そして数多の地獄を探しても、神性を持つ龍種がどれほど残っているだろうか?

アメリカ系列の支援があり、東夏とは何の関係もないため、羽蛇神は毛一本失うこともなかった。だがそれ以外は、ほぼ大災厄と化した。應龍、黄龍、青龍、白龍など、四海に祀られていたすべての龍神の神性が、一夜にして消え去ったのだ。

その中には畿国の多くの龍神も含まれ、一夜にして格を落とされ、大蛇の類に成り下がった……多くの河川の主が一夜のうちに消え、生き残ったものは早々に宗旨替えをしたか、かろうじて命脈を保っているかのどちらかだった。このヤハタ弓も、真の神器から微かな神性を持つ国境の遺物へと変わってしまった……

どれほど多くの龍神が、何年もかけて培った神性が一掃され、突如としてこの大災厄に見舞われたことか。畿国系列はどこに訴えればよかったというのか?

当時の東夏系列の態度は断固として、行動は迅速、その気概は恐ろしいほどで、誰も立ち向かうことができなかった。

立ち向かうな、立ち向かう者は死ぬ、最悪の場合は玉石俱焚だ。

70年に及ぶ準備の末、一朝にして発動し、烈風が吹き荒れるように、瞬時に完成した。

事後、天文会でさえ東夏系列の「家庭の問題」に干渉することはできなかった。

なぜかと問われれば、畿国、ミャンマー、そしてアジアの周辺地域で崇拝されている龍神は、すべて東夏の出典から放射されたものではないのか?

かつて出典が開放され、利益を得られる時には拒否しなかったくせに、今は開放されなくなったからといって、飛び跳ねて目を剥くのか?それのどこに道理があるというのだ?

長年の祭祀と育成、毎年注ぎ込まれた金の線、今となっては他人の嫁入り道具となり、国を挙げて百年のアルバイトで、東夏の驚天動地の偉業を成し遂げる手助けをしたのだ。

——絶地天通!

四方から収穫された龍神の神性に加え、東夏自身が投じた血の代価も驚くほど大きく、天敵となり得る昇華の道を何本も捨てただけでなく、前代の燭龍さえも自らの神聖な一面を切り捨て、「燭九陰」へと変化した。

最終的に、一柱の存在する神を鋳造するに足る膨大な神性、聖痕、そして力は誰の手にも渡らず、真実で虚偽ではない龍脈となり、国土を貫き、東夏の国境全体に放射された。

その瞬間から、「世に真龍なし」となり、この力は惜しみなく東夏の各インチの土地と構成員の手に贈られた……

まさにその年から、東夏系列は現在の黄金時代を迎えた。

14人もの五階への昇進だけでなく、無数の地獄の拡大と16の大型国境の出現、さらには前任の天敵がまだ逝去していない時に、新世代の天敵チューハイがすでに誕生していた。

わずか10年の間に、東夏系列はかつてない双天敵を持ち、ソ連系列を完全に抑圧し、ローマ系列と天下一を争い、名実共に現状の覇者となった。

人材の爆発的増加が一時的に終わった時、誰もが拡大した東夏系列がしばらく休養するだろうと思っていたが、すぐに12歳で戴冠した白帝子が現れ……さらに恐ろしいほど限界の見えない底力と、近年頭角を現してきた様々な新星たち。

盛極而衰?

くそ衰退だ!

この世には強者はより強く、弱者はより弱くなるという道理しかない!

そうでなければ、かつて百里の外から一矢で六軍の扇を射断ち、平氏の命脈を絶ち、畿国のその後千年の未来を決定したヤハタ弓がどうしてこれほどまでに衰えてしまったのか。

そのことを思うだけで、天城坊の胸中には憎しみの炎が燃え上がり、すぐにこの狂気じみた憎悪の源を察知した——彼の手にした長弓だ。

東夏系列の聖痕の存在を感知し、この長弓はもはや耐えられないほどの怒りを覚えていた。

「よし、よし、お前を腕として、この戦いは決まったも同然だ!」

天城坊は胸中にその憎しみを喜んで受け入れ、続いて胸の内に小さくも重い金属の小槌が浮かび上がった。

揺らすだけで、槌からは無数の雷光が迸り、目を刺すほどだった。

これこそが彼自身の霊魂と結合して鍛造された奇跡、鴉天狗の聖痕だった。

「南無八幡大菩薩、どうかこの武運を成就させたまえ!」

彼は大笑いし、腕を広げた。

地天を揺るがす雷鳴を巻き起こした。

この瞬間、鴉天狗の聖痕とヤハタ弓の間に原質によって繋がりが形成され、まったく異なる二つの奇跡が同じ源から生まれたかのように、彼の手の中で合体し、最後には肉眼では直視できないほどの輝かしい光だけが残った。

それは長剣のようだった。

古風な様式だが、その形は炎と雷鳴の光の中で絶えず変化し、最後には天と地を引き裂くような巨大な響きを生み出した。

系譜の中で最高の秘密でヤハタ弓と鴉天狗の聖痕を結合させた後、この神性に最も激しい解放を与え、真の神跡を形成した。

——神聖な刻印・建御雷!

あるいは「十戈剣」とも呼ばれる!

この瞬間、十戈剣が持ち上げられ、振り下ろされると、疾風が巻き起こり、縦横に吹き荒れた。続いて遠方から雷鳴が鞭打つように降り注ぎ、恐ろしい炎柱が地上から立ち上がり、すべてを飲み込んだ。

天城坊の促しや注入がなくとも、神聖な刻印は自ら邪馬台の遊離源質を吸い取り、絶えずこの破壊を振りまいていた。

火花が立ち上がった瞬間、驚愕したすべての瞳がその暴虐な光に照らされた。

戦争はその瞬間に始まった。

「汝ら、我が掩護となれ!」

鴉天狗は翼を広げ、「十戈剣」を手に、空高く舞い上がり、一直線に銀座へと向かった。瞬時に長い距離を飛び越え、三越ビルの真上に到達した。

天穹の上に高く立ち、下を見下ろす。

十戈剣、斬落!

また一筋の炎柱が立ち上がり、続いて三本目、四本目。

四本の天を突く炎柱が形成された瞬間、銀座全体がその恐ろしい高熱に封鎖された——これはもはや昇華者の力では比肩できないものであり、紛れもない神跡だった。

昔日の神々の力を歴史に刻み、今この地に現れさせる。

神聖な刻印の力は完全な破壊をもたらし、外周の防備を枯れ木を折るように引き裂き、続いて幾重にも重なる霧の中の三越ビルへと斬りかかった!

「神聖な刻印か?厄介だね……」

その瞬間、葉雪涯の瞳が上がった。

天から降り、地から立ち上がる恐ろしい火花の中から、一本の指を上げ、横に振った。無数の霧が突然銀座を覆い、すぐに急速に散った。

三越ビル全体が跡形もなく消えていた。

続いて、雪涯の十本の指が弾かれると、肉眼では見分けがたい無数の痕跡が縦横に飛び交い、銀座地区全体を包み込んだ。

青丘軍団の支援の下、彼女は自分が浪費するための無限の原質を持つことができ、瞬時に銀座全体を幻想の中に取り込み、続いて霊魂の能力を発動させた。

——離別!

長い熟成と変化を経て、ほぼ蛹化を迎えようとしていた霊魂の能力は、この場で恐ろしい力を示した。彼女の指が空中で描くと、無数の蜘蛛の糸のような白い線が銀座の上空に縦横に交差し始めた。細すぎて気づくのが難しいほどだが、一ミリの誤差もなく真っ直ぐだった。

続いて、銀座は離別した。

雪涯の霊魂の能力はとても単純で、二つのものを分離するだけだった。まるで二つのものが決して合わさったことがなかったかのように。

しかしこのような純粋な効果がこれほど巨大な規模で適用されると、恐ろしいほどの変化を引き起こした。

銀座全体が縦横に交差する白い線の下で切り刻まれ、さらにこころつきの幻術によって乱雑に一箇所に組み合わされた。前後左右上下、あらゆる方向が意味を失い、内外遠近の区別もなくなった。

十戈剣の暴虐な火花が天から降り注いだが、鴉天狗の一撃とともに、銀座の右側から噴出し、横に掃き、遠くの高層ビルをすべて灰に焼き尽くした。

「無駄だ!」

鴉天狗は冷笑した。「これはお前らしくないな、葉雪涯、いったいどれだけ亀のように縮こもるつもりだ?青丘の幻術はあとどれくらい持つ?お前の能力はどれだけ持ちこたえられる?」

「さあね、もしかしたら神聖な刻印を維持できる時間よりも長いかもしれないわよ」

雪涯は無数の破砕されたミラーから横顔を覗かせ、輝かしく微笑んだ。「これは守りを固めて援軍を待つってやつよ。私みたいな素敵な女は攻めも守りもできるの。天文会に頼んだ援軍が来たら、すぐに出てってあんたを叩きのめすわ」

「笑わせる!」

天城坊は嘲笑した。天文会が東夏系列と畿国系列の戦いに介入するなんてあるわけがない。

しかし何故か、彼女にそう言われると、天城坊の心には漠然とした不安が生じた。過去の影なのか、単なる予感なのか。

猛攻の中、彼は突然手を振り、鹿の鳴く館の部下たちに命令した。

「私があの女を押さえる、お前たちを中に送り込む。あとはただ最下層に隠されているものを見つければいい。他のものは気にするな」

山姥はうなずいた。

命を賭ける時が来た。

ソドムと閔夏堂の隊列から臨時に徴集された昇華者と、鹿の鳴く館のすべてのメンバーを合わせて、40人以上の昇華者が一箇所に集結した。

続いて、山姥は背中から塗装が剥げた大きな棒を取り出し、原質を注入すると、背筋が凍るような厳粛な気配がそこから立ち上り、続いて漆黒の大文字が棒の表面に浮かび上がった。

残念ながら、年代が古すぎて「海軍魂」の三文字しか見えず、他は判読できなかった。

これが鹿の鳴く館が今回の行動で入手した国境の遺物の中で最も貴重なものだった。ただし、その能力は敵を傷つけるものではなく、味方を強化するものだった。

棒を振り上げると、最前列の者が上着を脱いだ。山姥は深く息を吸い込み、大声で叫んだ。「根性!」

棒が振り下ろされた。

昇華者の顔色は瞬時に鉄青になり、続いて体全体が膨張し、まるで本当に根性と勇気を注入されたかのように、全身の資質の波動が溢れ出し、聖痕の力が空前に活発になった。

一人が終わるとすぐに二人目。

十数人に根性を注入した後、山姥はすでに力尽きて地面に倒れていたが、自然と他の者が彼の仕事を引き継いだ。わずか数分で、すべての昇華者が根性の注入を受け、恥を知って勇気を奮い起こし、まるで十全大補丸を飲んだかのように一人一人が血色良く、すでに一刻も早く戦場に身を投じようと待ちきれない様子だった。

準備完了。

天城坊はうなずき、手の中の十戈剣が突然すべての光を収め、前へ、斬り下ろした。

天狗の聖痕に秘伝された絶妙な剣術。

——天狗の勝!

続いて、幻境が開かれた!