董詩雨は明らかに葉辰がこれほど興奮するとは思っていなかった。
彼女は葉辰が握った手を見て、頬を赤らめた。
「葉さん……」
葉辰はようやく我に返り、手を離した。「君が百里雄と一緒に入ったのなら、彼の居場所を知っているだろう。」
董詩雨は頷き、複雑な表情を浮かべた。「葉さん、私についてきてください。」
「わかった。」
董詩雨は葉辰を連れて北へ約十キロ歩いた。
葉辰が驚いたことに、十キロ先は非常に繁華だった。
古風な建築物だけでなく、現代的な建物も少なくなかった。
繁華さは京城に劣らなかった。
「葉さん、ここは崑崙虚の明陽鎮です。この辺りで一番大きな町で、この数日間私はここに滞在していました。」
「百里将軍は近くの酒楼にずっといます。」
葉辰は眉をひそめた。百里雄は宗門へ妻を探しに行くはずではなかったのか。なぜここに留まっているのだろう?
「彼はこの数日間何をしていたんだ?」
董詩雨は深いため息をついた。「お酒を飲んでいます。この数日間、百里将軍はずっと飲んでいて、何度諭しても無駄でした。葉さんだけが説得できるかもしれません。」
話しながら、二人は酒楼に入った。
酒楼の隅で、葉辰は無精ひげを生やした坊主頭の男を見つけた。
一目で百里雄だとわかった。
しかし、数日前に会った時の彼とは全く違っていた。
一国の将軍の威厳は消え失せ、まるで意気消沈した浮浪者のようだった!
酒壺を手に持ち、窓の外を見つめて何かを考えているようだった。
「葉さん……百里将軍はここ数日気性が荒くなっています。お気をつけください……」
董詩雨は警告した。前回彼女が諭そうとした時、重傷を負いかけたのだ。
結局のところ、百里雄の実力は華夏でもトップクラスだった。
葉辰は返事をせず、百里雄の横に座り、五本の指で酒壺を奪い取った。
一気に酒を飲み干した。
これは崑崙虚の名物の烈酒だった。
百里雄は手の中が空っぽになったのを見て、無形の怒りが込み上げてきた。「これは俺の酒だ、なぜお前が……」
声は突然途切れた。
酔っ払っていた百里雄は葉辰を見た瞬間、立ち上がり、少し正気に戻ったようだった。
「葉さん!」
百里雄が半跪しようとした時、葉辰は身体に力を集中させ、百里雄を席に押し戻した。
「座れ。」