琴ばあやは顔を曇らせた。彼女は武聖の器を使って、強引に遺体を持ち帰るつもりだった。
しかし今、なぜか秦玉と向き合うと、心に恐れを感じていた。
それが二つの遺体のせいなのか、それとも秦玉自身のせいなのか分からなかった。
しばらく考えた後、琴ばあやは冷ややかに言った。「約束は守ってもらいたいものだ。さもなければ、京都武道協会が黙ってはおかないぞ!」
そう言い残すと、琴ばあやは背を向けて立ち去った。
その後ろ姿を見つめながら、秦玉は思わず冷笑した。
「来い、同じ武聖の力を持つ者同士、どちらが強いか見せてもらおう」と秦玉は冷笑いながら言った。
琴ばあやは自分の住まいに戻った。
彼女は自分の体にくっついている小黒を見て、思わず笑みを浮かべた。
「上層部が承諾してくれた。明後日には化形丹をくれるそうだ」と琴ばあやはにこやかに言った。
「そうすればお前も人の姿に戻れる」
その言葉を聞いて、小黒は大きな頭で琴ばあやを優しく擦り寄せた。
その時、琴ばあやは軽くため息をつき、小声で言った。「あの秦玉が現れてから、京都は本当に落ち着かなくなってしまった」
秦玉の名前が出た途端、小黒は舌を出し、体を震わせ始めた。
怒りの気配が部屋中に漂い、家全体がぶんぶんと震動した。
琴ばあやは宥めるように言った。「お前が彼を憎んでいるのは分かっている。安心しなさい。人の姿に戻ったら、チャンスを与えてあげるから」
その言葉を聞いて、小黒の震える体はようやく落ち着きを取り戻した。
...
その後しばらくの間、秦玉は八字髭の屋敷から出なかった。
ある日、秦玉が空間神器から造化の力を取り出そうとしたとき、外から誰かが入ってきた。
「秦玉、お客様です」来たのは武道学院の職員だった。
秦玉は彼を一瞥し、眉をひそめて言った。「お客?誰だ?」
「天機閣閣主の駱靖宇です」
その名前を聞いて、秦玉は眉を上げた。
天機閣閣主?訪ねてきたというのか?
「分かった、すぐに出向く」と秦玉は言った。
彼は造化の力を収め、口元に冷笑を浮かべた。
どうやら、天機閣閣主は清算に来たようだ。
秦玉は立ち上がり、大股で武道学院を出た。
学院の門前には、老若二人が立っていた。
この二人こそ、天機閣の父子だった。
そして彼らの後ろには、三人の従者がいた。