秦玉はかつてこの毒について聞いたことがあった。
春毒に感染すると、全身が耐えられないほど熱くなる。
この毒を解くには非常に厳しい条件があり、交わること以外にほとんど方法がない。
春毒を早急に解毒しないと、体に永久的な損傷を与える可能性が極めて高い。
ただ、秦玉が理解できなかったのは、なぜこのタイミングで春毒に感染したのか?誰が毒を盛ったのか?
「おかしいな」自分に寄り添ってくる張逸九を見ながら、秦玉は眉をひそめた。
「もしかして松にいたちが毒を盛ったのか?」
あれこれ考えた結果、それしか可能性がなかった。
彼らは恐らく早くから張逸九に毒を盛っていて、今になって発症したのだろう。
今や張逸九は自分の服を引き裂かんばかりだった。
彼女の玉葱のような指が、秦玉の体を絶え間なく撫でていた。
秦玉も血気盛んな若者で、このような誘惑に直面すると、彼でさえも耐えがたかった。
「暑い...助けて...」
張逸九は秦玉の顔に近づき、口を開けて秦玉の唇に飛びついた。
その決定的な瞬間、秦玉は張逸九を突き飛ばした。
彼は急いで雪の中に飛び込み、この骨まで凍るような雪で自分の意識を覚醒させた。
数分後、秦玉は雪の中から這い出てきた。
彼は苦しむ張逸九を見つめ、首を振りながら言った。「すまない、顔若雪を裏切るようなことはできない...」
秦玉の脳裏にほんの少しでもそんな考えが浮かんだだけで、顔若雪に申し訳が立たないと感じた。
「暑い...助けて....」張逸九は必死に懇願し、手を伸ばして秦玉の太ももを掴もうとした。
秦玉は深く息を吸い込み、手を上げて「バン」という音とともに張逸九の背中を打った。
張逸九はすぐに気を失い、意識が散った。
しかし彼女の肉身は、依然として毒の影響を受けていた。
元々白かった肌が、今では暗赤色に見えた。
秦玉は首を振りながら言った。「本当に申し訳ない、耐えられないなら、殺すしかない」
この言葉を他人が聞いたら、きっと秦玉は情が無いと思うだろう。
しかしこの長い修道の過程で、秦玉の心はますます硬くなり、顔若雪以外なら何を失っても構わなかった。
張逸九は地面に横たわり、秦玉はそばで見守っていた。
どれくらい時間が経ったか分からないが、ようやく張逸九は目を覚ました。