「まさか?国際的なレーサーのヤンシーがここに来るなんて?毎年主催者が彼女を招待しているって聞いたけど、こんな大した大会じゃないから断っているって」
「そうだね、その通りだ。今回、渡辺光祐は本当にヤバいことになったな!渡辺家も終わりだろう?息子を取り戻すには、3億円じゃないと...」
「...」
二人は話しながら、寺田凛奈の傍を通り過ぎていった。
寺田凛奈は足を止めた。
彼女はずっと、渡辺光祐が何か問題に巻き込まれているのを知っていたが、こんなに大きな問題だとは思わなかった。
どうして家では一言も言わなかったのだろう?
そう考えながら、寺田凛奈は寺田芽に安全に気をつけるようメッセージを送り、レーサーの控室に向かった。
レーサーの控室は、一般人が入れる場所ではなかった。
ここを守っている人々は篠崎さんが最も信頼する人たちで、たまたま門番をしていたのは、あの日寺田凛奈が篠崎家に突入した時に彼女を止めた一人で、その後の出来事にも関わっていた。彼は寺田凛奈を見て少し驚き、急いで口を開いた。「篠崎さんのところにご案内します!」