秋田さんは石丸慧佳が話に割り込んできたのを見ても怒らず、にこにこしながら答え続けた。「渡辺家のお嬢様、寺田凛奈さんですよ。」
石丸慧佳:?
彼女の瞳孔が急に縮み、大声で叫んだ。「ありえない!」
彼女の激しい反応は、逆に寺田雅美がさっき強く握った指を隠してしまった。秋田さんは不思議そうに彼女を見た。「どうしたの?」
どうすればいいの?
寺田雅美は何かを思い出したようで、表情を平然と保ちながら言った。「この方が、さっきあなたが言っていた、舞踏会で目立っていた人なんですね?」
石丸慧佳:……
彼女は誰かにぴしゃりと平手打ちされたような気がして、頬が熱くなった。
さっきまで目立ったとしても誰も欲しがらない、今でも誰も求婚に来ていないと言ったばかりなのに、どうして急に、こんなにすごい彼氏を見つけたの?
これはありえない!
秋田さんは驚いて「何が目立ったって?」と聞いた。
明らかに彼女は事情を知らなかった。
寺田雅美は人の悪口を言う印象を与えないようにしながら、困ったような笑みを浮かべて言った。「何でもありません。この方のダンスが上手だったってことです。」
凛奈を褒めたので、石丸慧佳は当然、恥ずかしさと怒りで顔を赤くした。「何よ?寺田さん、人の悪口を言わないのはいいけど、藤本家に間違った印象を与えちゃダメでしょ。秋田さん、私が教えてあげる。寺田凛奈は結婚したくてたまらない人なのよ!渡辺家に田舎から引き取られてから、今年の舞踏会に行く機会を見つけて、舞踏会で大いに目立ったの。知ってる?彼女はダンスが上手いことをアピールするために、目立つために、男性のステップまで踊ったのよ!ほら、みんな知ってるでしょ!まさに必死に目立とうとしたのよ。彼女はこうやって、早く男を見つけて嫁に行きたいのよ!あなた、間違えてるんじゃない?あんな子を、藤本さんが気に入るわけないでしょ?」
秋田さんはこんな話が聞けるとは思っていなかったので、興奮して口を開いた。「そうなの?石丸さん、詳しく教えて……」
石丸慧佳は油を注ぎ、塩を振りかけるように、その日の出来事を一通り話した。彼女の強要や渡辺光春の悔しさは省略し、目立ちたがりで、注目を集めたがる女性像を作り上げた。