電話はすぐに出られ、向こうから清らかな女性の声で丁重な挨拶が聞こえた。「先生、何かご用でしょうか?」
三原御医の息子は、父親に一人の直弟子がいて、女性だということは知っていたが、会ったことはなかった。しかし、二人は何度も電話で話をしていた。
彼は咳払いをして言った。「師妹、私だ。」
「師兄、何かありましたか?」
三原御医の息子は口を開いた。「こういうことなんだ。ここに五十嵐安神丸を高値で購入したい人がいるんだけど、時間があったら父のために一粒作ってくれないかな?」
相手の声は怠そうだった。「師匠が売るんですか?」
三原御医の息子はうなずいた。「ああ、相手は2000万円で買うと言っている。」
電話の向こうの寺田凛奈は「…………」
安神丸を作る薬材の中で、500年人参が一番高価で、他のものを全部合わせても最大で数十万円程度だ。その人参だって、オークションで1000万円もあれば買えるはずだ。
これはどこの頭のおかしな人間が、2000万円も出して薬を買うんだ?
彼女は、三原御医が一度に一粒しか作れなかったことを完全に忘れていた。この事実が広まれば、一粒の薬が数千万円の価値があるのも当然だろう。
彼女はあくびをしながら言った。「ちょうど一炉作ったところだから、一粒あげるわ。」
三原御医の息子はすぐに言った。「じゃあ、お金の半分を分けよう。」
「要りません。」寺田凛奈は最初、何も要らないと言おうと思ったが、突然安平堂の500年人参を使ったことを思い出した。彼女はすぐに口を開いた。「500年人参を一つください!」
安神丸を作るには、確かに500年人参が必要だ。
一つの人参で、父は一粒しか作れなかった。
小師妹にもう一つ予備として渡そう。もし失敗したらどうする?
だから三原御医の息子はすぐに言った。「いいよ、二つあげよう!」
「わかりました。」
寺田凛奈は言った。「後で誰かに届けさせます。」
「問題ない。」
この時、寺田凛奈は渡辺家に戻る途中だった。電話を受けた後、渡辺光春に電話をかけ、三原御医の住所と報酬について伝えた。
渡辺光春の師匠はこれを聞いて、二つ返事で薬を届けに行くと申し出た。