第264章 寺田家に認められる!

藤本凜人の彼女は寺田凛奈だ。

  寺田凛奈は寺田家の人間だ。つまり、これは政略結婚ではないのか?

  寺田真治はこの言葉を小さな声で言った。他の人々は聞き取れなかった。寺田史之助が尋ねた。「兄さん、何て言ったの?」

  寺田真治は咳をして、「なんでもない」と答えた。

  寺田史之助は頷いた。「そうだな。我々二家は以前から政略結婚を約束していたんだ。だから藤本凜人は必ず寺田家の人間と結婚しなければならない。彼がこうして約束を破るのはどういうことだ?寺田雅美を何年も待たせただけじゃないか?」

  寺田真治はこの言葉を聞いて、寺田史之助を一瞥したが、何も言わなかった。

  寺田雅美は俯いて言った。「次兄、もういいわ。先に食事をしましょう」

  一行は夕食を済ませ、他の人々は憤慨しながら去っていった。みんなが帰った後、寺田雅美が階段を上ろうとしたとき、寺田真治に呼び止められた。「雅美」

  寺田雅美は素直に寺田真治の前に歩み寄り、恭しく呼びかけた。「兄さん」

  寺田真治は淡々と言った。「藤本家のことだが、数年前に私は藤本凜人の態度を君に伝えたはずだ。その時、君は藤本凜人に彼女がいないし、自分も急いで彼氏を作る必要はないと言って、そのまま引き延ばしてきた。今、藤本凜人に彼女ができたわけだが、君はどう思う?」

  藤本家と寺田家は政略結婽を計画していた。元々は藤本凜人と寺田雅美を結婚させるつもりだった。

  二人が18歳の時にも話が出ていた。その時はまだ藤本建吾の存在がなかった。しかし、藤本凜人は拒否した。

  この件を持ち出すと寺田雅美の顔を潰すことになりかねないので、寺田真治とだけ内密に相談していた。

  寺田真治は寺田雅美にその話を伝え、自分の時間を無駄にしないようにと言った。

  寺田雅美はこの数年間彼氏を作らず、藤本凜人にも彼女がいなかったので、寺田真治は家族に公表せず、二人にまだチャンスがあるかもしれないと思っていた。

  実際、藤本凜人が寺田雅美を裏切ったというわけではなく、他の家族が知らないだけだった。

  寺田雅美はこの言葉を聞いて、目を数回きょろきょろさせた後、俯いて言った。「兄さんの言う通りにします」