第309章 銀行カードは私のだ!

寺田雅美はその言葉を言い終えると、執事の方を向いて指示した。「銀行の支店長なら、中へ通してください」

執事は「かしこまりました」と応じた。

振り向いて歩き出そうとする。

寺田治は驚いて彼を呼び止めた。「ちょっと待って!」

しかし、執事は彼を無視した。

六少爺は幼い頃から腕白で、特にお嬢様と比べられると、より彼の悪さが目立つようになり、家の使用人たちも彼に対して多くの不満を持っていた。

それに、ここは寺田亮と寺田真治の家であり、寺田真治が現在の当主として、寺田亮に養子に出されたようなものだ。寺田雅美こそがこの家の女主人なのだ。

執事が部屋を出て行った後、寺田治は怒り心頭に発した。「何をしているんだ?彼らは僕を探しに来たんだぞ。どうして勝手に承諾したんだ?」

寺田雅美は目を伏せたまま、淡々と答えた。「銀行の支店長があなたを探しに来たのに、なぜそんなに動揺しているの?もしかして、凛奈のあのキャッシュカードに何か問題があったの?」

彼女の言葉を聞いて、寺田治は階下を見た。

案の定、家の使用人たちが彼の方を見ていた。彼はほとんど反射的に口を開いた。「あのカードは僕のだ!」

寺田雅美「……」

彼女は目を伏せたまま、淡々と口を開いた。「ことり、お姉さんとして、私は絶対に管理しなければならないわ。あなたのものなら、なおさら管理が必要よ。さあ、見てみましょう」

寺田治は彼女を押しのけようとしたが、そのとき、支店長がすでに入ってきていた。

彼は執事の後ろについて、初めて寺田家に入った。寺田家の豪華な内装を見て、心の中で感慨深くなった。なるほど、このようなキャッシュカードを使うわけだ。出身が本当に高貴なんだな!

しかし、すぐにあの貴重なお客様に謝罪しなければならないと思い、彼は軽率な行動を取るわけにはいかなかった。

そう考えながら、彼は背筋を伸ばし、表情に真剣さを浮かべた。

彼が厳しい表情をしているのを見て、寺田治はさらに恐れた。

うぅぅぅ……

寺田凛奈のあのキャッシュカードは結局、盗んだものなのか、それとも奪ったものなのか?銀行の支店長がこれほど苦労して、ついに彼のところまで調べ上げてきたなんて。