寺田雅美はその言葉を言い終えると、執事の方を向いて指示した。「銀行の支店長なら、中へ通してください」
執事は「かしこまりました」と応じた。
振り向いて歩き出そうとする。
寺田治は驚いて彼を呼び止めた。「ちょっと待って!」
しかし、執事は彼を無視した。
六少爺は幼い頃から腕白で、特にお嬢様と比べられると、より彼の悪さが目立つようになり、家の使用人たちも彼に対して多くの不満を持っていた。
それに、ここは寺田亮と寺田真治の家であり、寺田真治が現在の当主として、寺田亮に養子に出されたようなものだ。寺田雅美こそがこの家の女主人なのだ。
執事が部屋を出て行った後、寺田治は怒り心頭に発した。「何をしているんだ?彼らは僕を探しに来たんだぞ。どうして勝手に承諾したんだ?」
寺田雅美は目を伏せたまま、淡々と答えた。「銀行の支店長があなたを探しに来たのに、なぜそんなに動揺しているの?もしかして、凛奈のあのキャッシュカードに何か問題があったの?」