寺田凛奈は足を止め、まだ動かないうちに、その一団が彼女と寺田芽、藤本凜人の前に来ていた。
一行が大勢で彼らの前を通り過ぎた後、寺田芽は驚いて呆然としていた。「ママ、瀬戸お爺さんがあなたの知らないところで、また弟子を取ったの?」
寺田凛奈:「……」
藤本凜人:「……」
寺田凛奈は少し沈黙した後、ゆっくりと言った。「あれは偽物よ。」
「びっくりした。」寺田芽は胸をなでおろした。「瀬戸お爺さんがついに目覚めて、ママが武術の才能がないことを知って、ママを諦めたのかと思った!」
「……」
寺田凛奈は寺田芽を横目で見て、冷ややかな目つきで言った。「何を言ってるの?」
寺田芽はすぐに笑顔で言った。「ママ、褒めてるんだよ!ママは武術の才能がないんじゃなくて、武術の神様だから、練習しなくても強いんだよ!努力する必要なんてないんだから!」
「……」
このお世辞を言う能力は、あまりにも呆れるほどだ。
彼らが話している間に、すでに外に出ていた。先ほど寺田凛奈を案内してきたスタッフが前に立ち、次の人を引き込もうとしていた。「瀬戸家の大姉と写真を撮りたいですか?2万円で1枚です!」
寺田凛奈は直接歩み寄り、口を開いた。「小坂大師兄に会わせて。」
そのスタッフがちょうど頷こうとしたとき、振り向いて藤本凜人を見て、驚いた。
実は、武術場はここ数年ますます儲からなくなっていたので、瀬戸家の大姉と小坂大師兄が人々に尊敬され、新たな収入源となっていた。
そのスタッフは、ここに常駐している数少ないベテランの一人で、当然藤本凜人のことも知っていた。
10年前には小坂大師兄の本当の姿を見たことはなかったが、彼の番号はスタッフが鮮明に覚えていた。
057。
彼は思わず目をこすり、再び藤本凜人の手札の番号を見た。確かに057だった!
彼はゴクリと唾を飲み込み、咳をした。「大、大師兄ですか?」
藤本凜人は仮面の後ろの目を細め、声は低く冷たく、かすかに脅迫めいた調子で言った。「そうだ。オフィスで写真撮影ができると言っていたじゃないか?会いに行きたい。」
スタッフ:「……」
あれは偽物なのに、本人がここにいて何を騒いでいるんだ!