辻本凌也は時間を無駄にしたくなかったので、素早く決着をつけようと思った。
そのため、彼はこの一撃に全身の力を込めた。相手が女性であることも気にせず、少しも情けをかける気はなかった。
本来なら、目の前の女性は細い体を利用して避けることができたはずだ。
しかし、028号はなんと避けもせず、むしろ手を伸ばして彼の一撃を受け止めようとした!
「本当に死にたいらしい!」
辻本凌也は心の中でそう思い、冷笑した。
彼らの流派は力を重視する。拳王の弟子として、力の面では間違いなく最強だ。彼が瀬戸門に挑発したのもそのためだ。小坂門は身のこなしが素早いので、彼が勝てるかどうかわからなかったからだ。
しかし、瀬戸門も実力本位の流派だ。
だが、一人の女が彼と力比べをするだって?
ふん。
辻本凌也はそう考えながら、さらにスピードを上げた。体の勢いに加えて元々蓄えていた力で、この一撃は泰山を押すような勢いになっていた。
少し近くに立っていた人々は、彼の拳風の殺気を感じ取り、一様に心配そうに寺田凛奈を見つめた。
寺田凛奈は前のいくつかの試合では一撃で勝利していたが、この時も彼女のことを心配し始めた。
しかし次の瞬間!
二つの拳が空中で交わった!
「バン!」
重い力がぶつかり合う音は、骨が砕けそうな感じがした。
寺田洵太は思わず眉をひそめ、頭の中では既に京都のどの病院の外科が一番良いか、028号の骨を接合できるかを考え始めていた。
しかし目を凝らして見ると、場内の二人はそこに立ったまま、拳はまだ離れていなかった……
寺田凛奈の銀のマスクの下の目には何の変化も見られなかったが、辻本凌也は驚きと戸惑いの表情を浮かべ、信じられないという様子で二人の接触している拳を見つめていた。
10秒後、辻本凌也の足が弱り、全身が二歩後ろに下がった。拳を握っていた手はすでに力なく垂れ下がり、明らかに骨折していた。
彼は呆然と自分の手を見つめ、再び寺田凛奈を見た。
すると、これまで受け身だった女性が突然駆け寄ってきた。彼女の唇の端に冷たい笑みが浮かび、そして長く白い脚を伸ばした……