藤本凛人に寺田凛奈が目配せをして、突然素早く横に滑り込んだ。
寺田洵太は一瞬戸惑い、追いかけようとした。「おい、どこに行くんだ……」
しかし、腕を藤本凛人に掴まれ、男は冷ややかに答えた。「彼女は少し用事があるんだ。」
「何の用事だよ?もうすぐ申し込み締め切りだぞ!今日が最終日なんだぞ!」
藤本凛人は彼の手を放さなかった。「俺たち二人で申し込めばいい。」
寺田洵太は眉をひそめた。「そんなの無理だろ?団体戦は3人全員が揃ってないと…お前…」
言葉が途切れたところで、藤本凛人に引っ張られて申し込み所に向かった。
寺田洵太:??
彼は振り払おうとしたが、自分の力では振り切れなかった。これは先ほど自分が行こうとした時、寺田凛奈に腕を掴まれて行かせてもらえなかった時のことを思い出させた。
この夫婦は本当に変だ、二人とも怪力だ。
この疑問を抱きながら、寺田洵太は藤本凛人と共に申し込み所に到着した。
申し込み所のスタッフは元々だらしなく足を組んでいたが、二人が入ってきて藤本凛人を見た瞬間、ビシッと立ち上がった。「だ、だ、だ……」
「大師兄」と呼ぼうとしたところで、藤本凛人に遮られた。「団体戦に申し込みに来た。一人は用事があって、二人で申し込めるか?」
スタッフ:!!!
団体戦に申し込む?
大師兄、何を冗談言ってるんだ!
誰があなたのスピードについていけるっていうんだ!
しかし、スタッフは多くを語る勇気がなかった。特に藤本凛人の視線を前にして、彼は笑った。「はい、はい!もちろんです!お三方のお名前は?」
「琉心、028番、そして俺だ。」藤本凛人は一瞬間を置いた。「820番。」
820番?
この番号は既に誰かがいるはずだが、大師兄が820番だと言うなら、それは820番だ。スタッフは気が利いて、すぐに頷いた。「はい、すぐに処理いたします!」
そう言って、彼は頭を下げて印鑑を押し、団体戦の申し込みを済ませた。通常の質問さえ省略した。「はい、明日から団体戦に参加できます。」
「わかった。」