寺田凛奈が裏庭の人里離れた花園に向かう時、周りの使用人たちはすでに起きていた。
皆が彼女を見つめ、彼女が近づく前に慌てて離れていった。
二人が小声で話していた:
「聞いた?凛奈さんが老いぼれの病気を治すつもりだって!」
「老いぼれの狂気は、当時の先代が最も専門的な人を探しても治せなかったのに、彼女に治せるのか?彼女が寺田家に来たばかりで、何か成し遂げて認められたいのはわかるけど、これは...ちょっとやりすぎじゃない?」
「早く行こう。そのうち私たちの体に問題があると言って、診察しようとするかもしれない。断れば彼女を怒らせるし、断らなければモルモット扱いされるぞ。」
「ああ、老いぼれが可哀想だ。ただでさえ狂っているのに、彼女にさらに苦しめられるなんて...」
迷いながら尋ねる人もいた:「でも凛奈さんはとても自信があるように見えたよ。もしかしたら本当に治療できるんじゃない?」
「凛奈さんはただの外科医で、名が売れているわけでもない。どうして精神病を診られるはずがあるの?専門の精神科医でさえ治せないのに...」
「...」
一行が小声でぶつぶつ言っている中、寺田凛奈はまったく気にせず、老いぼれの部屋に入った。
老いぼれはまんじゅうを食べていた。
彼女が来ることを知っていた執事が、今もそばに立ち、複雑な表情で寺田凛奈を見ていた。
昨夜、寺田凛奈が老いぼれを診察すると言ってきたとき、執事はそれはいけないと思った。
老いぼれも人間だ。狂っているとはいえ、生きている命なのだ。どうして勝手に弄ばれていいものか。
彼はすぐに寺田真治にこの件を話したが、執事の予想に反して、寺田真治は少し躊躇した後、同意してしまった。
執事は仕方なく様子を見守るしかなかった。
老いぼれは狂っているが、寺田家で長年過ごす中で、執事が最も彼と関わり、二人の仲も一番良かった。彼は老いぼれが苦しむのを望んでいなかった。
どんなことがあっても、老いぼれも人間なのだ。
そう思いながら、寺田凛奈が持ってきた箱を開けるのを見た。中には細長い針が入っていた。
執事は目を見開き、驚いた様子だった。